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9話 爆滅の飼育係
しおりを挟むアルマ達は無事【黒黒しい墓場】ダンジョンをクリアした。
こういったダンジョン系は1日に1度しかプレイできないのが難点のポイントであった。
その代わり莫大な経験値が入る事から人気があった。
その中でもスコアというものがあり、そのスコアで競い合うものなのだが、このダンジョンにてとんでもないスコアを叩き出した人物達がいた。
それが爆滅の飼育係アルマであった。
100億スコアは課金者が叩き出したスコアなのに、無課金者であるアルマ達パーティーが150億というスコアを叩き出した。
もちろんそれを見て絶句する人々。最初は爆滅のアルマという厨二病的な異名がついていたいたのに、なぜか悪意を込められて飼育係と付けられた。
いつも獣人みたいな衣装をつけているプレイヤーと一緒にいる事からであった。
現在どこにでもあるNPCレストランにてご飯を食べているアルマ達は、周りの視線に晒された。
それは色々な意味でだった。
芝犬の獣人であるタツゴローは地面に皿を置いてそこで食べている。
鶏の獣人であるジキンも同じように、黒猫のキャティも同じように食べている。
「やはり地面に皿を置いて食べた方が落ち着くんだぞぞぞ」
「やはりワシらは動物じゃのう」
「それは否定はしませんわ」
「ところで主人よステーキを前にしてなぜフリーズしているんだじょい」
「てめーらに周りを気にするという気持ちがないのかね?」
アルマの慟哭は心の中で響き渡っていた。
「さすが爆滅の飼育係さん、パーティーメンバーを動物のように調教してるわ」
「普通地面に皿を置いて食わせるかね、リアルでもやってるんじゃないか」
「だがリアルだと、どうなるんだ? 人間なのか? このゲームにログインしているから人間なんだろうけどさ、3人の獣人さん達は」
「今の殿方はああいったプレイをするのですね、メモメモ」
「そこメモらんでいい」
「要は変態ってことだ」
「だな、さすが爆滅の飼育係は変態だな」
「変態、変態」
しばらくアルマはフリーズしていく中で、ゆっくりとステーキをナイフとフォークで切り分ける。
耐えるのだ自分と心の中で活を入れる状況であった。
フリーズしていく中で、アルマは周りを見回す。
完全にこちらを気にしている。
確かに引きこもりになったのは自分の頭が良すぎたせいもあった。
それでいじめられたこともあった。
いじめてくるやつは馬鹿だと思った。
あの時天才になろうともこんなに注目を浴びることはなかった。
だが今変態として注目を浴びている。
最初は決闘で勝利したナイスガイな無課金者であったのに、今ではパーティーメンバーを動物のように調教する変態となっている。
アルマはグッと堪えながら、ステーキを食したのであった。
NPCレストランから出ると、3体の仲間達に忠告をすることにした。
「頼むから、食事くらいは椅子に座ってくれ、お前らが動物である事は理解しているつもりだ、だけどここでは1人の人間として行動してくれ、頼む、そうでなくちゃ、お、俺は、変態に」
「ふむ、主人の言う事もモットーです。変態とはどういう意味なのですか?」
「あれじゃ、体が変形するんじゃ」
「なんかかっこいいじゃないですか、わたしも変形したいです」
「君たちに願った俺が馬鹿だった。まぁいい、基本的に食事は持ち帰りにしよう」
それからその日はログアウトしてウェイバリアンオンラインゲームを終了した。
その日からなぜか芝犬と鶏と黒猫のペット達はとてつもなく懐いてきたのだ。
現実世界では彼等と話をする事はできない。
もしかしたら彼等は話しかけているつもりで鳴き声を発しているのかもしれない。
それでもアルマは言葉として認識する事が出来ない。
しかしウェイバリアンオンラインゲームと自分が改良を施した動物用のV R機材があれば、それは夢ではなく、現実として再現出来る事柄なのだ。
=====寺林の村=====
それから畑仕事をするようになり、ペット達はグループホームの自宅でくつろいでいる。
寺林の村の畑では基本的に漢方薬の元となる薬草や一般的な野菜、果物、または大きなハウスが建てられており、椎茸の栽培やまたは特殊なキノコの研究などをしている。
アルマは一通りの仕事を覚えるのに必死であったが、肉体労働は基本的に慣れていないため、汗だくになりながらも、頑張っている。
その日の太陽はとても輝いており、お月さまの光など消してしまうくらいであった。
頭に帽子を被らないと日射病になるし、定期的な水分補給をしないと脱水症状となり命の危険となる。
周りには色々な事情でやってきた人たちがいて、職員さんは利用者の具合を随時確認している。
なので帽子は支給されるし、水分も支給される。
時たまアイスなんて支給されることもある。
そうやって自分が地球の中の小さな一部だと認識し始める。
人類の基本は衣食住だと思う、その中の一つである食を担うのが今アルマがやっている仕事なのだ。
機械文明が発達した今の時代、食事のありがたみを再認識し始めたのは一つの人生の機転として良かったのかもしれない。自分自身を変えたいと思った事それがきっと大事な事なのだと思いたいと思っていた。
そうして待ちに待ったゲームタイムで夕食を食べた後、即座に芝犬のタツゴローと鶏のジキンと黒猫のキャティにVR機を身につけさせるとアルマも頭の上にVR機を身につけた。
次の瞬間、現実では見る事のない幻想的な世界へと旅立つのであった。
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