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11話 おねえちゃんのなかはあったかい

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「みこおねえちゃん……?」私はベッドで仰向けになって、自分の上に馬乗りになって、背筋をまっすぐ伸ばしている姉を見上げていた。
 
 私はみこの
 
 パジャマのボタンがいくつか取れていて、あいだから下乳が少し覗いている。寝るときだし、下着はつけていないみたい。
 
「……ごめんね、私は悪い姉だ」みこは悲しそうな表情で告げてくる。
 
「なんであやまるの?」私はたずねる。
 
「姉なのに………妹のあなたを好きになってしまったの」
 
「わるい……? 私もみこおねえちゃんのこと好きだよ」わたしはそう答える。
 
「ううん、そうじゃないの。妹としてではなくて……女性として好きになっちゃったの……」ゆっくりと上半身を曲げ、顔を近づけてくる。
 
「……よくわかんないけど、恋人ってこと?」
 
「ええ……だめなことなのはわかってる、でも想いがとまらないのよ」みこおねえちゃんの吐息がかかる。はあ、はぁ。
 
「キスしたり、いちゃいちゃしたくてたまらないの」
 思い詰めた表情で伝えてくる。
 
 おねえちゃんがなんで思い詰めてるのかはっきりとはわからなかった。でもなんとかしてあげたい、助けになってあげたい。
 
「いいよ」私は言う。
 
「えっ」
 
「わたしをすきにしていいよ。できることならなんでもするから」私はじっと姉の目を見つめる。
 
「……いいの?」みこの表情が少し明るくなる。
 
「うん。つらそうなおねえちゃんを見てると、私までつらくなっちゃうから」
 
「あ、ありがとう」みこおねえちゃんの瞳から涙が一筋、零れる。でもその表情は笑っていた。
 
 ぎゅ、と私に抱きついてきた。むに、とおっきなおっぱいがが当たるのがわかる。
 
 すーっ、すーっ。おねえちゃんは私の匂いを嗅いでいるようだ。くさくないかなぁ、と不安になる。
 
 私もまねをして、おねえちゃんの匂いをかぐ。パジャマの柔軟剤にまじって……おねえちゃんの匂いも感じる。なんだか落ち着く、いい匂いだ。
 
 おねえちゃんの鼓動がふわふわのおっぱいを通して伝わってくる。恋人って緊張するのかな?
 
 背中に手を回しぎゅ、と抱きしめる。すーっ。みこおねえちゃんの匂いをいっぱいすいこむ。
 
 ……あれ、私もなんだかどきどきする。なんだろう、せつない気持ちがしてきた。これが恋なのかな。
 
 ……しばらく、そうしていた。私は目を瞑り、おねえちゃんを感じていた。どきどきしているからか、不思議と眠くならない。
 
「なめて、いい?」「いいよー」姉のお願いに二つ返事で私はOKする。………どこをなめるのかな。
 
 姉は身体を上げ、ゆっくりとした手つきで私のパジャマに手をかけ、ボタンを外そうとした。ああ、おっぱいをなめたいのかな?
 
 二つほど外したところで手が止まった。我に返ったように首をふる。「だめ……まだ、はやいわ」みこおねえちゃんはそうつぶやいてボタンを戻す。
 
「ごめんね、重かったよね」とおねえちゃんは私の横に添い寝をするかたちで寝転がる。
 
「ううん、そんなことないよ」馬乗りの体勢になっていたものの、腰を浮かしてくれていたのを私は知っている。
 
 おねえちゃんは右手をとり自分のほっぺにくっつける。「あったかいなぁ」と顔がほころぶ。
 
「おてて、なめる?」と私はたずねてみる。こくり、とみこおねえちゃんはうなずき、手の甲にキスをする。ふにふにでやわらかい。
 
 ぺろ、と人差し指のお腹をなめてくる。舌の感触が指に伝わる。さらにぺろぺろと、猫や犬のように舐めはじめた。
 
「ふふふっ」ふしぎな感触に私は思わず笑ってしまう。
 
「くすぐったかった? ごめんね」みこおねえちゃんはとっさに舌を離す。
 
「ううん大丈夫、もっとしていいよ」と返す。
 
「……くわえても?」
 
「もちろん」私は笑顔で答える。
 
「ありがとう。大好き」そう告げ、みこおねえちゃんは人差し指と中指を両方とも口に含む。
 
 おねえちゃんのなか、あったかいなぁ。指を少し動かして、やさしく撫でてみる。ざらざら、ぬるぬるしておもしろい。
 
「ふにゅ」ふしぎなこえをおねえちゃんは出す。表情がとろんとしている。かわいいな、なんておもってしまう。
 
 れろりと、指の間に舌を絡ませてくる。「んっ、ふっ」私もふしぎな声が出てしまう。背中がぞわぞわする。
 
 ちゅく、ぴちゃ、ちゅぷり、ぺちゃ。なめる音だけが部屋にひびく。……なんか、さらに心がどきどきしてきた。おねえちゃんと目が合う。きゅっと心がしめつけられる。
 
「私も……すきだよ」気づくとそう言っていた。
 
 みこおねえちゃんは指から口を離し、「わたしも」と返す。
 
 私の指は濡れていて、少し糸が引いていた。それをゆっくりと自分の口に含もうとし、
 
 
  
 
「ん……」目が覚めた。窓から射す朝日がまぶしい。
 
「ゆめか……夢だよね」自分に言い聞かせる。
 
 みこの方を見るのは少し気恥ずかしく、首を少し動かし目覚まし時計を見る。いつもより少し早い。
 
 指で触った舌、とてもリアルだったなぁ。今も感触が残っている。……え、残っている?
 
 ちゅー。そんな音が聞こえ、指の先が引っ張られる感覚があった。ゆっくりとみこの方に目を向ける。
 
 みこが私の指をくわえていた。夢と同じ様に、人差し指と中指を。違うのは《妹のみこ》が目を瞑っているということだけだ。要するに寝ぼけている。
 
 私は戸惑いつつもゆっくりと指を引く。「むにゅ」と変な声をあげる。ちゅぽん、とすんなり抜ける。
 
「おねーちゃん……このタピオカ飲めないよぉ……」みこは寝言をつぶやく。平和そうな夢を見てるみたいだ。少なくとも私よりかは。
 
 指はふやけてプールに入ったときのようにしわしわになっていた。ずいぶん長い間咥えられていたようだった。ちょっと嬉しい。
 
 身体を起こし、拭くためのティッシュに手を伸ばしかけ、止まる。
 
 ……夢のつづき、しようかな。
 
 ふたたび、指をみつめる。朝日に照らされた指はみこのよだれで美しく輝いていた。
 
 少し口を開け、そろり、そろりと指を近づける。みこの舌と間接キス。そう考えると気持ちがたかぶってしまう。呼吸が自然と荒くなる、まるで夢の中のみこおねえちゃんの様に。
 
 舌が指に触れる。あまい……そんなはずないのに心が勝手にあまいと感じてしまう。ああ、幸せだ。
 
「……にゅみ」声が聞こえた。みこが寝ぼけているのだろ……起き上がってきた!? いつもは全然起きないのに!? なんで!?
 
「おふぁよ……」目をこすりながら私を見上げる。私は驚きのあまり固まってしまっていた。
 
「ゆび……咥えてる……」みこは見たままを呟く。
 
「あっや、みっ、みこのよだれがついてっ、たから」大馬鹿な私は誤魔化すつもりで正直に言ってしまう。
 
「よだれ……たらして寝てたかぁ」口元を手の甲でぬぐう。少し勘違いをしてるみたい。「ふいてくれてありがと……ふぁあ」あくびをしながら私に寄りかかるように抱きつく。
 
「いやその……」私は勘違いを訂正しようか迷う。「すぅ……」みこは二度寝をはじめていた。
 
 まあいいや。私は可愛い妹を抱きしめ返し、ぼんやりする。
  
 
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