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咲夜の恋路
..
しおりを挟む「…蓮、こっち向いて?」
「…えー」
蓮を1人にしなきゃ良かった。
先程、席を取っていた蓮がナンパ集団に絡まれ、ついカッとなって威嚇してしまった。
アルファの威嚇をしたのはこれが初めてだ。
自分でもよく分からなかった、というのは言い訳だ。現に蓮を怖がらせてしまった。
蓮は何も無い振りをしているけれど、先程から声が震えているような気がして、こちらを向いてくれない。
少し下を向いてシャクシャクとかき氷を食べる蓮。
可能ならいますぐ抱きしめて撫でてキスして、安心させたい。
けれど注文したものを放っておくわけにはいかないし、大勢の前でイチャイチャするのも。
自分が不甲斐ない。
その後、話しかけてもいつもより反応が薄い蓮だったがお腹にものを入れて少し落ち着いたのか店を出る頃には少しこちらをちらりと見てくれるようになった。
「蓮、来て」
「…何…?」
彼の手をしっかり握り、岩場へと引っ張る。
人が居なくて白波が立っている岩場なので泳ぐのは危険そうだが、岩間の潮だまりに足をつけて遊ぶくらいは出来そうなところだった。
2人でちょうどいい岩に腰掛け、蓮をそっと引き寄せる。
「…まだ怖い?」
「…何が?…」
「俺、知らない間に威嚇してた。…怖かったよな、ごめん。…蓮が取られるって思ったらカッとなってつい…」
「…正直、怖かった」
「ごめん」
やっぱり…と分かってはいたが本人の口から聞くのが1番キツい。
「…でも…大丈夫…咲夜が好きだから、もう怖くない。」
「守ってくれてありがとう」とまっすぐ顔を上げて言う彼。
惚れ直してまうではないか。
蓮を抱きしめ「ありがとう」「好き」を何度も繰り返すと彼がポンポンと背中を撫でて「はいはい」と答えてくれる。
「俺…普段ならナンパとか、自分で何とかできるけど…なんか…どっかで咲夜が来てくれるってさ、まってた」
「変でしょ」と笑うその笑顔が眩しい。
俺の彼氏はこんなにも可愛くて綺麗でかっこいい。
「いつでも助けるよ。…蓮のことは俺が守りたい、それは蓮が男でも女でもオメガでもアルファでも変わらない」
「…そ」
「うん。…蓮が好きだから」
「…セックスする?」
「…ムードぶち壊し」
「ごめんごめん……でも…咲夜のこと好きすぎるなって…思ったから…」
「…し、したいけど…ホテル、帰ってからね」
昨晩は大浴場の豪華さにはしゃいでそのまま寝てしまい何もしなかった。
今日は部屋の広いガラス張りの浴室で泡風呂をしてイチャイチャからの…に、しようかな。
なんて。
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