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咲夜の恋路
.
しおりを挟む「蓮、決めた?」
「うーん…うん、いちごのかき氷練乳付き。」
「ご飯系は?」
「んー…どうしよう」
朝ごはんのビュッフェでワッフルを食べたからかあまりお腹は空いていない。
けれど果肉入りの美味しそうな練乳のかかったかき氷は捨てられない。
けれどお腹がすいてないわけでもないし、何よりいい匂いが漂っていて…迷う。
「俺たこ焼きとフランク食べるからたこ焼き半分する?」
「そうする」
席を取って待っているように咲夜に言われ、2人分の席でぼんやりと咲夜を待つ。
なんとなく、ラッシュガードを羽織っているとはいえ、水着に首輪とはなかなか不思議な感じだ。
濡れたり海水で痛むと嫌なので昔使っていた目立たない地味なものをつけているが…。
改めて咲夜の体を見ると自分の体が貧相に見えてくる。
彼が運動が得意なのは知っていたが、先程も自分を乗せた浮き輪をひいて泳いでいたところを見ると体力の違いやらを見せつけられた気分だ。
すん、と自分のペラペラな体を見下ろす。
骨が浮くほどガリガリではないが、筋肉も特になく、脂肪も特にない。
ぺったりとした体だ。
咲夜曰く、「甘いものばっか食べてタンパク質とか足りないんだよ」らしい。
タンパク質か…何食べればいいんだろう。
鶏肉?豆?
なんて考えているといつの間にやら2,3人の人影に囲まれていた。
「ね、君一人?可愛いじゃん」
「…いや…」
「男…だよね?いやでもめっちゃ美人じゃん。って、その首輪ってことはオメガ?」
「やば!俺初めて見たかも」
「遊ぼうよ、俺ら奢るからさ」
うげ、と思い切り下を突き出したくなる気持ちを抑え咲夜を探す。
人に埋もれて見えない。
席を立つ訳にも行かないし…無視しとくか。
「え、無視??」
「いーじゃん、ちょっとくらい。ノリ悪ぃな」
なかなかしつこい。
さすがにイライラしてきて「…彼氏いるんで」と言うと諦めるかと思いきや騒ぎ始めてしまった。
「まじ?アルファ?」
「オメガってセックスの時どんな感じなん?」
ギャハハと下品な笑い声にいい加減腹が立つ。
やっぱりオメガは舐められやすい。
「…誰ですか?あんたら」
聞こえないふりを突き通していると頭上から知っている声が。
咲夜、と顔を上げるとお盆を持った咲夜がナンパ男を今まで見たことがない顔で睨みつけていた。
その表情にこちらまで固まる。
自分に向けられている訳では無いのに、威圧に身動きが取れない。
アルファの威嚇か
「…やば…」
「っは、行こうぜ」
ベータにも効いたのだろう、周りの人も気にし始めたからか男達は去っていった。
「…蓮、蓮、大丈夫?」
「…。…うん、」
威圧が解けてもまだ体が強ばっている。
咲夜を心配させたくない。
そう思って頷き、顔を伏せた。
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