こっち見てよ旦那様

文字の大きさ
上 下
192 / 219
咲夜の恋路

.

しおりを挟む


「蓮、決めた?」

「うーん…うん、いちごのかき氷練乳付き。」

「ご飯系は?」

「んー…どうしよう」

朝ごはんのビュッフェでワッフルを食べたからかあまりお腹は空いていない。
けれど果肉入りの美味しそうな練乳のかかったかき氷は捨てられない。
けれどお腹がすいてないわけでもないし、何よりいい匂いが漂っていて…迷う。

「俺たこ焼きとフランク食べるからたこ焼き半分する?」

「そうする」

席を取って待っているように咲夜に言われ、2人分の席でぼんやりと咲夜を待つ。

なんとなく、ラッシュガードを羽織っているとはいえ、水着に首輪とはなかなか不思議な感じだ。
濡れたり海水で痛むと嫌なので昔使っていた目立たない地味なものをつけているが…。

改めて咲夜の体を見ると自分の体が貧相に見えてくる。
彼が運動が得意なのは知っていたが、先程も自分を乗せた浮き輪をひいて泳いでいたところを見ると体力の違いやらを見せつけられた気分だ。

すん、と自分のペラペラな体を見下ろす。
骨が浮くほどガリガリではないが、筋肉も特になく、脂肪も特にない。
ぺったりとした体だ。

咲夜曰く、「甘いものばっか食べてタンパク質とか足りないんだよ」らしい。
タンパク質か…何食べればいいんだろう。

鶏肉?豆?

なんて考えているといつの間にやら2,3人の人影に囲まれていた。

「ね、君一人?可愛いじゃん」

「…いや…」

「男…だよね?いやでもめっちゃ美人じゃん。って、その首輪ってことはオメガ?」

「やば!俺初めて見たかも」

「遊ぼうよ、俺ら奢るからさ」

うげ、と思い切り下を突き出したくなる気持ちを抑え咲夜を探す。
人に埋もれて見えない。
席を立つ訳にも行かないし…無視しとくか。

「え、無視??」

「いーじゃん、ちょっとくらい。ノリ悪ぃな」

なかなかしつこい。
さすがにイライラしてきて「…彼氏いるんで」と言うと諦めるかと思いきや騒ぎ始めてしまった。

「まじ?アルファ?」

「オメガってセックスの時どんな感じなん?」

ギャハハと下品な笑い声にいい加減腹が立つ。
やっぱりオメガは舐められやすい。


「…誰ですか?あんたら」

聞こえないふりを突き通していると頭上から知っている声が。
咲夜、と顔を上げるとお盆を持った咲夜がナンパ男を今まで見たことがない顔で睨みつけていた。

その表情にこちらまで固まる。
自分に向けられている訳では無いのに、威圧に身動きが取れない。

アルファの威嚇か


「…やば…」

「っは、行こうぜ」

ベータにも効いたのだろう、周りの人も気にし始めたからか男達は去っていった。

「…蓮、蓮、大丈夫?」

「…。…うん、」

威圧が解けてもまだ体が強ばっている。
咲夜を心配させたくない。

そう思って頷き、顔を伏せた。

しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

処理中です...