こっち見てよ旦那様

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「おっきいおふろ！」

「そうだね、おっきいね。滑るから走らないで、ママかパパの側にいてね」

「はぁい」

念願の大浴場にやってきた。空いている早い時間帯に来たからか人はほとんど居ない貸し切り状態だ。
大浴場が初めての湧は怖がるかと心配していたがワクワクしているようで良かった。
湧もいるしあんまりゆっくり出来ないな、と思いつつも来れただけで嬉しかったりする。

「湧、先に身体洗っちゃおう」

先に済ませてしまおうと個室の洗い場へ湧と入ろうとすると潤也さんに肩を叩かれる。

「俺がやるから、お前はゆっくりしておいで」

「…いいんですか？」

「もちろん。せっかく人も少ないんだ、楽しみにしてたんだろ？」

「じゃあお言葉に甘えて。…ありがとうございます」

彼に感謝しつつ軽く体を流そうと踵を返すと彼が「待て」と小声で付け足してくる。

「…湯に入る以外は…その、しっかりタオル巻いといてくれないか」

「…はい」

嫉妬？ほとんど人いないのに。
不思議に思いつつも彼が望むなら、とタオルを巻き直し掛け湯へと向かった。

軽く体の汚れを落として、気になっていた寝湯へと入る。ただの寝湯ではなく、ジェットバスでもあるから寝転びながらマッサージを受けれるという嬉しいものだ。
少し遠くから聞こえる彼と湧の声と水音を聞きながらしばらくまったりして、海が一望できるお風呂へと移動する。

最っ高…。

縁にもたれて軽く目を瞑る。
波の音と、お湯の音が心地よくて寝てしまいそうだ。

ずっとこうしてたいくらい…。旅行に来る為に新作のチェックやデザインを前倒しに済ませたので疲れている。

涼しい潮風と温かい湯に思わずウトウトしていると「まま！」と呼びかけられて目が覚める。

「透、寝るな。溺れるぞ」

「すみません、気持ちよくてつい」

「最近忙しそうだったもんな…エステもあるらしいからいってみたらどうだ？」

「行きたいですけど…湧のことずっと見てもらって大丈夫ですか？潤也さんも疲れてるでしょ？」

「俺は大丈夫だ。むしろ、いつも帰りが遅いからこういう時こそ湧と遊ばないと」

「な？」と湧を膝に乗せて湯に浸かる彼を頼もしいと感じる。
お言葉に甘えて今日はゆっくりしようかな。

「あのね！まま、さっきしゅわしゅわのおふろいった」

「しゅわしゅわかぁ、炭酸風呂かな」

「おいしい？」

「飲んじゃだめだよ」

湧は炭酸水好きだもんな、と彼と2人で笑いながらお風呂から出たら飲もうと約束した。