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しおりを挟む「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
翌日、いつもより幾分か遅い時間に起きてくると慌ただしく透が出かける支度をしていた。
急な用が入り、事務所に顔を出さなくては行けないとのことらしい。
透を送り出し、リビングで遊ぶ湧を見つつ今日使う資料に目を通しておく。
「叔父さん、少しいい?」
しばらくすると2階にいたはずの咲夜に話しかけられた。
隣に座るよう促すと「相談があって」と切り出される。これが透の言っていたことか、と内心頷きつつ咲夜の話に耳を傾けた。
「…その…Ωの子となんていうか、付き合う時に大事なことってある?」
なるほどな。
確かよく遊びに来るという同級生だろう。自分はちらりとしか見ていないし、湧もよく懐いている甘党の子、ということしか分からない。
咲夜と同じ学校で同じクラスにいるということはαかβと思っていたがまさかΩとは。
優秀な良い子なのだろう。
「そうだな…Ωでもβでも恋人は大切にするべきだな。…それで、その相手の子は発情期でも近いのか?」
「えっと…うん、そうだね。蓮っていうんだけど、発情期に抑制剤をいい感じに飲んだうえで家に来てって」
「なるほどな。お前も抑制剤は飲んでいけよ。で、…お前はそういう経験自体はあるのか?」
「ないよ。…だからどういうふうにすればいいか分からない」
なるほど、さてはその子にずっと片思いだったというわけか。
自分は透に出会ったのが遅かったからそれまでは、人並み以上に経験があった方だ。
まさかそれが今役に立つとは。
「どうする、と言われると困るが…とにかく変に格好つけずに相手を優先にすればいい。発情期とはいえ受け入れるがわの方が負担は大きいんだから」
「なるほど」と懸命に聞く咲夜。
熱心なことを見ると限りその子の事が大切ということがひしひしと伝わってくる。
「俺も相手の子が知りたいんだが、ダメか」
αは独占欲が強い。無理に見たいとは思わないが大事な甥っ子の大切な相手だ、見てみたい。
少し考えた後に「いいよ、特別だよ」と携帯の画面を見せてくれる。
「蓮は凄いんだよ。…俺より賢いし…よく寝てるけど、運動は苦手でこの前も…」
惚気が始まってしまった。
廣瀬とはまた違うタイプの惚気をするやつだ。
廣瀬相手だったら仕返しに透との惚気を言えるがさすがに甥っ子に対しては…。
だから俺は静かに無邪気な惚気を聞くことにした。
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