こっち見てよ旦那様

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咲夜の恋路

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「咲夜…おまたせ」

「蓮…!行こうか」

まわりはじっとり暑いけれど手を繋いで歩き出す。

「地下…通ってこ…暑い…めっちゃ…」

「あ、ああ。そうだね、そうしよ」

そうそうに暑さで死にそうな蓮を救うべく地下街へと移動した。
目的地である映画館はここを通って行けば大丈夫だ。

「蓮、大丈夫?」

「…うん…ここ、涼しいね」

涼しそうに目を細める彼の足取りは先程に比べて軽い。
蓮は勉強こそ出来るが運動はからきし、それに伴い体力もないので暑さには弱い。

「夏休みあけたら体育祭とかあるけど、蓮いけんの?」

「大丈夫」

ふっ、と自信満々にこちらを見てきた蓮。なんだろう、得意な種目でもあるのだろうか。

「俺…保険係になるから」

「あー…」

なるほど、クラスから2名ずつ出す保険係になれば競技に出なくていいと…。

だが彼の作戦には問題がある。


「あのな蓮…俺らのクラス人少ないから…保険係いらない…と思う」

「え…うそ…」

この世の終わりみたいな顔してる…。












「なあ、蓮。そんなにショックか?」

「…、、、…うん」

うんって…可愛いな。
映画館についてもショックを受けた状態の彼を慰めるべく抱きしめてよしよししてキスしたい…だがここは外。休日の映画館。
人がわんさかいるのでそんなことは出来ない恥ずかしい。

なので…そんな時に蓮の機嫌を取るのに有効なのは


「ほら蓮、あれ、買ってやるから~」

「…!」

俺が指さしたのは映画館の食べ物売り場のパネル。
そこに煌びやかに大きく張り出されていたのは「最強☆スイーツセット」。
ポップコーンエルサイズの入れ物の中にはキャラメルとチョコのポップコーン、そしてミニチュロス、ミニシュー、麦チョコ、ビスケットの入り交じる甘党には夢のような商品。

数分後にはそのスイーツセットをお盆に乗せ、満足気な蓮が歩いていた。
そしてお礼にと蓮に買ってもらったジュースとナチョスを俺は持って歩いていた。

「6番シアター…ここだな」

「あんま…いないね」

「マイナーだからなぁ…ま、ゆっくり見れていいよな」

俺らは後ろでゆっくり見るのが好き。
初めから手を繋ぎ、最後まで手を繋いでいるつもりだったが俺が泣いたのでそれは絶たれた。

「…だいじょぶ?」

空になったスイーツセットの入れ物やナチョスのゴミをまとめて捨ててくれた蓮がいまだにぐすぐす言う俺を覗き込む。

「っ、大丈夫…にしても…すごいな、蓮は泣かないで…感動しなかった?」

「いや…感動は…したは…した。あんま俺…泣かないから」

「そうやって感情移入できるとこ…俺…好きだよ」と蓮が囁いてくれたので涙が引っ込んだ。

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