こっち見てよ旦那様

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咲夜の恋路

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「そんなこと…もっと早く知りたかった。」

蓮の話を聞いてやっと口に出来たのはそれだった。

「…俺はね、蓮に話しかけた時から気になってたし…好きだよ…ずっと、誰より…」

緩んだ気がした目の上の彼の手のひらをそっと退けて驚く。
彼が泣いているではないか。

驚いたような瞳からはポロポロと涙がこぼれている。

慌てて彼の頬をそっと撫で、親指で涙を掬いとる。こんな時な言うべきではないかもしれないが、この涙さえ舐めてしまいたい。

「…好きだよ……咲夜…」

「蓮…そ、んな…かっこよく泣き顔で言われても…っ」

「昨夜も…泣いてる、よ?」

2人で静かに…俺は号泣していた。
静かに泣きながら笑い合った。

しばらくそうして、お互い落ち着いて鼻をかんたり涙を拭いて一段落したところで彼の手を取り真剣に話した。

「…首輪、明日からきちんと付けて来て欲しいんだ」

「…何で?」

「αがたくさんいる。…何より、俺が1番近くにいるし…間違えて噛んだら嫌だ。」

分かりづらいが、彼の顔が一瞬曇る。

「違うよ、勘違いしてたらしないでほしいけど…蓮と番になりたくないわけじゃない。ただ、ちゃんとしたくて…その時が来たら」

「大事にしたい」と付け足すと蓮が頷く。

「…首輪…古いのしかないし…また今度……買いに行こう」

「もちろん」

そっと蓮を抱きしめるとキスしたくなる。
早いかな、なんて悶えていると蓮が「キス…しないの?」なんて言ってくる。

「か、風邪移ったらだめだから!また今度!」

「…うつんないよ…」

「だめ。…もし移ったら…悲しい」

連のふわふわの髪を撫でて、匂いを堪能しながらそう言いながら思う。
…俺ってめちゃくちゃ変態っぽいな。

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