こっち見てよ旦那様

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咲夜の恋路

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あれから1ヶ月。
叔父さんの家からの登下校にも慣れ、距離が近くなったからか、放課後にれんと街で遊ぶことも増えた。

今日も放課後、少し大きめの駅で降りて彼の買い物に付き合うことにした。

用事を済ませて広場を歩いていると、蓮がたこ焼きのキッチンカーを指さす。

咲夜さくや…あれ、食べよう…」

「たこ焼き?…いいよ、買ってくるからそこで座って待ってて」

「ん」

蓮を近くのベンチに座らせ、財布だけ持ってキッチンカーでたこ焼きを買う。
出来たてで美味しそうだ。

踵を返してベンチへ向かおうとすると、蓮の元に1人の高校生がいた。
制服が違うから他校の知り合いだろうか。

それにしても随分と距離が近い。少し嫉妬して早足で向かうと遮るように声をかける。

「蓮、知り合い?」

「…咲夜…うん、小学校の時の…ね」

「あ、堀木ほりきっていいます。…にしても久しぶりだなぁ?!…あ、じゃあこの人が蓮の番??」

「…え?」

番ってどういうことだろう。
不思議に思って蓮の方に目を向けると彼が固まっていた。

「いやぁ、それならめでてぇよなぁ!首輪ももうなかったs…」

「黙れよ」

初めて聞く彼の声色だった。
冷たくて、低くて、場の空気が一気に凍りつく。

「…蓮…」

彼の肩に触れようとすると、手を振り払われ、彼はそのまま鞄を掴んで走り去ってしまった。

「や、やばい…俺いけないこと言った?」

「え…いや…。…蓮って、Ωだったの?」

「え、知らなかったんですか?」

今の時代、自分の第2性を隠すという風潮は無くなっている。抑制剤の進歩などで差別も少なくなってきてはいたり、事件も昔に比べれば減っているからだ。

だから堀木に悪気はなかったのだろう。

それにしても蓮は何故、Ωということを隠していたのだろう。ましてや、首輪を付けないなんて危険にも程がある。

…なんで俺を傍に置いてたんだろう。俺が酷いことをしたらどうするつもりだったんだろう。

「…蓮のやつ、結構早い段階でΩって分かって…首輪も早くからしてたんすけど…」

どうしよう、と頭を抱える堀木を見ていると携帯が鳴る。
蓮?!と慌てて開けると短いメッセージが届いていた。

『帰る』

たこ焼きはすっかり冷めてしまった。







結局、どうすることも出来ずに帰ってきてしまった。
どうしたら良いのだろう。

風呂上がり、アイスを食べながらリビングでぼんやりしているとゆうを寝かしつけてきたとおるさんに声をかけられる。

「…何か悩み事?…ずっとそんな感じたけど」

「…透さんは…Ωじゃなければ良かった、とか…自分の第2性を嫌だったことってありますか?」

隣に座った透さんに思わず聞いてしまう。少し失礼かもしれないと思ったが、透さんは気にしない様子で口を開いた。

「…あるよ。」

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