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しおりを挟む「すみません、お邪魔しました」
「いえいえ、手伝ってくれてありがとう。また来てね」
「透さん、俺蓮のこと送ってくる」
辺りはすっかり暗くなってしまった。
お土産を持たせた蓮君を送るという咲夜君を送り出し、床掃除を始めようと2階へ上がった。
引越しってホコリもゴミもたくさん出るからなぁ、なんて思いながら部屋を見るとすっかり綺麗になっていた。
…出る幕なし。
まとめてあったダンボールだけでも運び出しておこうと紐を取りに下へ降りていったところに、丁度潤也さんと湧が帰ってくる。
今日は水族館に行ってきたとの事だ。駆け寄ってきた湧を抱き上げて潤也さんともおかえりなさいのハグをする。
「たぁいまー!」
「おかえり、楽しかった?。…潤也さん、お疲れ様です」
「あぁ、俺も楽しかったから。…甥とその友達の面倒まで見てもらってすまないな」
「いえ、2人ともしっかりしてて僕の出る幕なしでした。一緒に暮らすのが楽しみです」
ご飯の作りがいがある。
2人が手を洗っている間に2階のダンボールを縛ってよいしょよいしょと玄関へ運んでいく。
階段がキツい。
「透、大丈夫か?」
「はい、大丈夫…っ!」
気を取られて足がもつれてしまった。
階段を踏み外して体が宙に浮く。
「っと、危ない。…気をつけてくれ、お前が怪我をしたら悲しい」
痛さを覚悟していたが潤也さんが受け止めてくれたらしい。
息がかかるほど近い彼に今更ながら照れながら「ありがとうございます」と降ろしてもらう。
「俺が運んでおくよ」
「ありがとうございます。…夕飯の支度しますね」
近くでイルカのぬいぐるみを振り回していた湧を連れてリビングへと戻り夕食の用意を始める。
用意と言っても料理自体はほとんど完成なのであとひとつ工程を加えるくらいだ。
「ただいま…です」
「おかえり。敬語じゃなくていいよ」
「おかぁい!」
そうこうしていると咲夜君も帰宅してきて湧と遊んでくれている。
今日は泊まっていくらしい。
ほとんどこちらに荷物を持ってきてしまったから仕方がないといえば仕方がない。
「手伝います」
「ありがとう、えっとね…湧のこと見ててくれると助かるかな、今テンションMAXで何するか分からないから」
「わかりました」
湧はご機嫌で、相変わらずぬいぐるみを握りしめてぴょんぴょん飛び跳ねたり歌ったり踊ったり、テンションは最高潮だ。
「湧君、俺と遊ぼう」とお兄さんのように湧に付き合ってくれる。
自分の兄さんも自分が小さい頃はあんなのだったのかなぁ、なんて。
過保護で少し鬱陶しい…という記憶しかない。
優しくて面白い、いい人なんだけどそれがたまに傷だ。
「はい、ご飯出来たよ。席についてくださーい」
潤也さんもやってきて、4人揃って食卓に並んだ。
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