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. 潤也目線
しおりを挟む「式も出るんですか?」
「あぁ、一応俺の社長就任式だから…妻もとのことで。お前が良ければだが…」
透の発情期が終わって数日経った頃、廣瀬に就任式の詳細を聞いてきたところ、透も出席した方が好ましいということだった。
嫌がるかな、と思っていたが「分かりました」と快く承諾してくれたので少し驚いた。
「少し嫌がるかと思っていた」
「式とかは昔から好きではないんですけど、潤也さんの晴れ舞台ですから。近くて見たいと思うのは当然です」
照れくさいが嬉しい。
「それで…忙しく無ければだが俺と湧とお前の衣装とパーティー会場の設営デザインを手伝って欲しい。…もちろん、仕事として依頼するし対価も払う」
「やってみたいです…!ちょうど仕事もひと段落してますし…まだ新作発表も先なのでやらせてください」
手帳を確認しながら笑ってくれる透を思わず抱き寄せる。
身内贔屓とかでもなく、彼の作品は気に入っているし、自分のパーティーは彼色に染めて欲しい。
「近々空いているなら廣瀬と担当者と話あって欲しいんだが…出来そうか?」
「はい、午前なら明日からでも」
「午後は仕事か?」
「はい、ファッション誌にうちのブランドが載るらしいのでその撮影を見に行くんです」
ほら、と企画書を見せてくれたりサイトを見せてくれる彼はとても楽しそうだ。
彼の事業は軌道に乗っている、αの性だろうか、彼が働かなくても俺自身で養って行けるのにとたまに思ってしまうが、こうも楽しそうな彼を見ると応援したいと思う。
彼自身の稼ぎなのだから彼が使えばいいと思うのだが、律儀に半分以上を家計に入れてくれている。
湧ももうすぐ保育園、透の用にも車を買おうかと話をすればもう資金は貯めていると言ってくる。
…強い
そういうところが好きだが。
自分が甘えられる環境にいても、自分をもってしっかり立っていられる彼はすごい。
そんなしっかりした彼が時折甘えてくるのも堪らない。
枕草子みたいだな、なんて一人思いながら透日記を付けるのも案外悪くは無いなんて思う。
「衣装は…そうですね、何かご希望はありますか?」
「そうだな…ガチガチに固めず、緩すぎず…と言ったら困るだろうか」
「素敵ですよ、しっかり式典ということを弁えつつ遊び心を取り入れたものにしましょうか」
早速、といったふうにiPadを取り出して楽しそうに作業を進める彼の肩をつつく。
「どうしました?」
「今は…ゆっくり…せっかく2人だから、頼んだのはこちらだが…」
夜は二人の時間だから、としどろもどろになってしまう。
自分から頼んでおいて何だという話だが…彼を相手にするとやはり素直になりすぎてしまうというか。
呆れただろうかと彼の様子を伺うとiPadを置いて「どうぞ」と腕を広げてくれた彼を迷わず抱きしめた。
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