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しおりを挟む「本当か…?」
『はい。楓斗が名簿を見たところ確実でした』
「そうか…今そいつは仕事中か?」
『はい。今日の夕方前に上がるかと』
「そいつと顔を合わす…警察にそのまま任せるのが良作かもしれないが…警察が上手く動かなかったり刑が軽くなると再犯される可能性がある」
『そうですね。…うちの会社でされた方が良いかと』
電話を切り、湧を抱き上げると透の仕事部屋へ向かう。
どうやら例のストーカーは楓斗さんの事務所に勤めている事務員らしい。
警察はストーカー被害をどう受け取るか、分からない。証拠は十分だが、直ぐに解放されて再犯されてはかなわない。
「透、少し出かけたいんだが…いいか?」
「はい。…あの…」
「すぐ戻る、いつでも電話していい。…誰か来ても無闇に開けるなよ」
心配そうにこちらを見る彼を抱き締めて湧を預ける。
今から行けばそいつの仕事上がりまでに間に合うだろう。
権力乱用は良くないとは思う。けど、そんなことが関係なくなるほど、俺は透を怖がらせ、湧にも危険を及ぼした奴を放っては置けない。
「行ってらっしゃい」
「行ってくる。湧、ママを頼んだぞ」
「ばーばい?」
見送ってくれた2人に手を振り鞄を持って車に乗り込む。
「廣瀬!」
「来ましたか。…楓斗はしんどそうでしたので先に帰らせました。…事務所にアポイントは取ってますので呼び出してきます」
「…いや、俺が行こう。」
「わかりました」
事務所のビルに入り、受付にて要件と名刺を出すとスムーズに小部屋へ通された。
「あ、あの…」
少し経ってやってきたのはひょろっとした背ばかり高いオドオドした男だった。
モデルやタレントを扱う事務所で勤めている風貌には思えない。
容姿でそのように決めつけるのは良くないかもしれない。が、社の雰囲気に立ち振る舞いや身に付けるものに気を使うことも勤めの1つだ。接客や容姿を売りにする会社なら尚更だ。
「お初にお目にかかります。…私は三ツ橋社、副社長を務めている者です。」
名刺を差し出していつもの外面でにこやかに接すると男に明らかな動揺が見える。
こいつは俺と透の関係性を知っている。
名乗ったことで確信、そして今の動揺だ。
さて、どうしてやるか。
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