106 / 219
33
.
しおりを挟む「拙者、アカツキと申す。実は先日、こちらの近くに住む巫女の女性と、お見合いをしたのでござる」
聞けば、相手の機嫌を損ねてしまったとのことです。
どうやら、ソナエさんのお見合いの相手とは、アカツキさんのようですね。
隣のソナエさんを、確認します。
あー、怒っていますねぇ。
わたしたちは暗がりにいるのですが、ソナエさんの青筋がくっきりと見えますよ。
ソナエさんの腕を、ヒジで小突きます。
態度で示すと、相手にも伝わっちゃいますよ。
ダメですね、これは。話す気がない模様です。
ソナエさんがここまで立腹している姿は、初めて見ました。
よほど、腹にすえかねる物言いをされたのでしょう。
「何を話されたんですか?」
「他愛のない話です。どのような酒を好むか、あてはどれか。拙者は、トマトやチーズだけでも楽しめるというと、相手はたいそう喜んでくださいましたぞ。食事の好みも、ほぼ同じだったので、大丈夫だと思うていたのです」
よかったじゃないですか。なにが不満だったのでしょう?
「発言に失礼があったか、心当たりはありますか?」
「無礼だったのは、両親です」
初対面だというのに、お母様がやたらとソナエさんに小言を言ってきたとか。
相手方の両親ができた人で、そのままことなきを得たと言います。
お父様まで叱り飛ばしたくらいだとか。
「あなたご自身に、問題があったとのお考えは?」
「思い当たるフシが、何も。おそらく、それも怒らせた原因だったのでござろう。なんてことのない会話で、憤慨されたのでしょう」
反省は、しているようですが。
あー、もう。
ソナエさんブチギレじゃないですか。
これは、早く解決せねば。
「何を話したか、再現はできますか」
「毎朝、あなたの味噌汁が飲みたいと」
「……あー」
これは、罪深い。
ダメですね。ダメダメです。これはギルティというしかありません。
実に罪な発言ですよ、これは。
「おサムライさん。あなたは首をハネられても文句が言えません」
「そこまででござるか!?」
「あなたの中では、朝は眠いのにお味噌汁を作るのは、女性だけなのですね」
まだわかっていないのか、アカツキさんは黙り込みます。
「あなたは、炊事などの家事を奥様一人に押し付けるおつもりで?」
「……っ!」
アカツキさんが、ハッと息を呑みました。
わたしの言わんとしていることが、ようやく飲み込めたようで。
「失念していた。これでは、母と同じではないか!」
「では、その旨をお伝えください。きっと、わかり合えるはずですから」
シスター・エマと一緒に、お粥のお店で休憩をします。
「とにかく、指示に従えって注文が多いんだよ。武家だからかねえ」
わたしは、とかくその「武家」なるワードがひっかかりました。
どうもブケというのは、こちらでいう「騎士団」のような役職だそうで。
「ブケ、という家系は、そんなにめんどくさいの?」
エマからの質問に、ソナエさんは「うんうん」とブンブン首を振ります。
「しきたりには、うるさいかな? 考え方が古いから」
こちらも、騎士や貴族の中には柔軟な考えの人は少ないかも知れません。
「謎マナーが多いぜ。箸の持ちからや食べ方まで、指図してきやがる」
めんどうな方みたいですね。
「ですが、お料理が上手じゃないですか。結婚のご意思自体はあるのでは?」
「あたしが食べたいから、料理が勝手にうまくなったんだ。伴侶なんて、考えたこともないさ」
自分がおいしい晩酌を楽しみたいから、料理の腕を磨いたとのこと。
なるほど、自分のためならいくらでもおいしいものを作るけど、他人のためとなると話は別だと。
休憩を終えて、再度ザンゲ室へ。
今度の方は、お歳をめしたおばあさまのようで。
「実は先日、息子の見合い相手にきつくあたりすぎてしまって」
へ?
今度は、お見合い相手のお母様がいらっしゃったと?
聞けば、相手の機嫌を損ねてしまったとのことです。
どうやら、ソナエさんのお見合いの相手とは、アカツキさんのようですね。
隣のソナエさんを、確認します。
あー、怒っていますねぇ。
わたしたちは暗がりにいるのですが、ソナエさんの青筋がくっきりと見えますよ。
ソナエさんの腕を、ヒジで小突きます。
態度で示すと、相手にも伝わっちゃいますよ。
ダメですね、これは。話す気がない模様です。
ソナエさんがここまで立腹している姿は、初めて見ました。
よほど、腹にすえかねる物言いをされたのでしょう。
「何を話されたんですか?」
「他愛のない話です。どのような酒を好むか、あてはどれか。拙者は、トマトやチーズだけでも楽しめるというと、相手はたいそう喜んでくださいましたぞ。食事の好みも、ほぼ同じだったので、大丈夫だと思うていたのです」
よかったじゃないですか。なにが不満だったのでしょう?
「発言に失礼があったか、心当たりはありますか?」
「無礼だったのは、両親です」
初対面だというのに、お母様がやたらとソナエさんに小言を言ってきたとか。
相手方の両親ができた人で、そのままことなきを得たと言います。
お父様まで叱り飛ばしたくらいだとか。
「あなたご自身に、問題があったとのお考えは?」
「思い当たるフシが、何も。おそらく、それも怒らせた原因だったのでござろう。なんてことのない会話で、憤慨されたのでしょう」
反省は、しているようですが。
あー、もう。
ソナエさんブチギレじゃないですか。
これは、早く解決せねば。
「何を話したか、再現はできますか」
「毎朝、あなたの味噌汁が飲みたいと」
「……あー」
これは、罪深い。
ダメですね。ダメダメです。これはギルティというしかありません。
実に罪な発言ですよ、これは。
「おサムライさん。あなたは首をハネられても文句が言えません」
「そこまででござるか!?」
「あなたの中では、朝は眠いのにお味噌汁を作るのは、女性だけなのですね」
まだわかっていないのか、アカツキさんは黙り込みます。
「あなたは、炊事などの家事を奥様一人に押し付けるおつもりで?」
「……っ!」
アカツキさんが、ハッと息を呑みました。
わたしの言わんとしていることが、ようやく飲み込めたようで。
「失念していた。これでは、母と同じではないか!」
「では、その旨をお伝えください。きっと、わかり合えるはずですから」
シスター・エマと一緒に、お粥のお店で休憩をします。
「とにかく、指示に従えって注文が多いんだよ。武家だからかねえ」
わたしは、とかくその「武家」なるワードがひっかかりました。
どうもブケというのは、こちらでいう「騎士団」のような役職だそうで。
「ブケ、という家系は、そんなにめんどくさいの?」
エマからの質問に、ソナエさんは「うんうん」とブンブン首を振ります。
「しきたりには、うるさいかな? 考え方が古いから」
こちらも、騎士や貴族の中には柔軟な考えの人は少ないかも知れません。
「謎マナーが多いぜ。箸の持ちからや食べ方まで、指図してきやがる」
めんどうな方みたいですね。
「ですが、お料理が上手じゃないですか。結婚のご意思自体はあるのでは?」
「あたしが食べたいから、料理が勝手にうまくなったんだ。伴侶なんて、考えたこともないさ」
自分がおいしい晩酌を楽しみたいから、料理の腕を磨いたとのこと。
なるほど、自分のためならいくらでもおいしいものを作るけど、他人のためとなると話は別だと。
休憩を終えて、再度ザンゲ室へ。
今度の方は、お歳をめしたおばあさまのようで。
「実は先日、息子の見合い相手にきつくあたりすぎてしまって」
へ?
今度は、お見合い相手のお母様がいらっしゃったと?
14
お気に入りに追加
1,510
あなたにおすすめの小説

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです



こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる