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しおりを挟む朝、朝日と共に湧の泣き声で目覚める。
今朝は寝起きが悪いらしい。
「いいよ、俺が行く」
「…一緒に行きます」
欠伸をしながらベッドを出る潤也さんと一緒に子ども部屋へ向かう。
ベビーベッドの柵に掴まり立ちをして泣いている湧を潤也さんが抱き上げてあやす。
オムツ替えをして暫くあやすと落ち着いたらしい。
「湧、ご飯にしような」
潤也さんの肩に顔を埋めてこくんと頷く湧を下へ連れていく潤也さんを見送りゴミを捨てに洗面所へ向かう。
ついでに顔も洗って髪もとかしておこうと鏡に向かって少し伸びた髪を霧吹きで濡らす。
「切りに行かないとな…」
今度は襟足だけ伸ばしてみようかな、なんてヘアバンドで髪をとめてダイニングへと戻る。
今日はご機嫌ななめの日らしい。
大好きなパンとヨーグルトを前にしてもムッとしている。
「ご機嫌ななめですね」
「あぁ…」
「潤也さん、顔洗ってきていいですよ。朝ご飯用意しておくので」
ありがとう、と洗面所に向かった彼を背に湧に話しかける。
「湧、ご飯美味しくない?」
「んん…」
むぐむぐと小さな唸りを上げながらも首を振る湧の頭を撫でて台所へ立つ。
カウンターになっているから湧の様子がいつでも見れていい。
ピザトーストを用意しながら最近飲み始めた青汁を飲む。
独特の苦味が苦手だが、豆乳で割ると気持ちよく飲めるようになったので続けている。
ちゃんと綺麗でいたいもんなぁ、なんて。
潤也さんの隣に立つのなら少しでも堂々としていたい。
「まま、くぁしゃい」
「おかわりね、ちょっと待っててね」
湧のジュースのおかわりを入れて2人分の朝食もテーブルに並べる。
ピザトーストだけだと味気なかったのでヨーグルトも添えてみた。
たまにはいいか。
顔洗ってスッキリしたらしい潤也さんが珍しくヘアバンドで登場した。
…ちょっと面白い。けどイケメンは何をしてもイケメンという事実が証明されつつもある。
「今日は何するんだ?」
「今日は作品の軽い修正と…試作品の続きを作ろうと思ってます」
「そうか。…じゃあその間湧を見てる」
「いいんですか?」
「あぁ、今日は2人と一緒にいる為にとった休みだからな」
心配するな、とトーストを齧る彼に感謝の意を伝える。
昨日はあんなことがあったから。
正直、外に出たり1人で家にいるのは怖い。
けどそんな事をいつまでも言っていられる訳でもない。
けれどこれから湧も守って…やっていけるだろうか。思わず考えてしまっいるとこつん、とおでこを指でつつかれる。
「心配するな。…大丈夫だ」
彼は全てお見通しだろうか。
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