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しおりを挟む彼の言葉に驚く。
あまりに前のことで発情期は忘れていた。
最後に透の発情期が来たのはもう1年以上?2年弱も前になるだろうか。
「あ、あぁ…発情期か。確かに湧も1歳…早いな」
「本当ですよ。…僕も定期検診に行ったらそんなことを言われてびっくりです。ほんとに、早いですね」
「…発情期の時はどう過ごす?」
すり、と彼の頭に頬を擦り寄せ尋ねる。1週間、休暇を取って湧の世話を…いや、その間透は放ったらかしか?
「抑制剤飲んで…ぼちぼち家で過ごそうかと思います。以前貰っていたものを飲めば多少しんどくも動けますから」
「けど匂いますよね」と心配そうな透を振り向かせる。
「お前が飲むなら俺も薬を飲む、発情期休暇も取るし…湧の面倒も家事も俺がやる、頼りないかもしれないが…存分に俺を使ってくれ」
真面目に語ってしまった。
俺が頼りないからか、仕事が詰まっているからか、湧が産まれてからは一層、彼は強く1人で進めるようになってしまった。
俺のせいかもしれない。
それでも俺は彼の為なら何でもするし、何でも覚える。
じっと彼を見ていると彼がふふ、と笑い出す。
「これ以上ないくらい、潤也さんは頼りがいがありますよ。たくさん助けてもらおうかな…でもまだ少し先と思いますし、ゆっくり決めましょう」
「あぁ…!もっと頼ってくれ、お前はもっともっと甘やかされるべきだ。…どんどん遠くに行ってしまいそうで…モデルの写真…」
しまった、口を滑らせた。
「なんで…もしかして、見たんですか?」
「あ、あぁ…えっと…廣瀬に見せてもらってな」
「恥ずかしいです!…隠してたのに」
「家にあるのか?」
「何冊かあります…」
「風呂から出たら見せてくれるか」
「…もう見たんでしょう」
透がむくれてる。
とても可愛いがやはりもう一度俺は写真を見たい。
「お願い聞くから、頼む!」
「言いましたね?…わかりました、出たら見せてあげます」
彼のお願いなら何時何時も聞くのだがな。
彼のお願いが楽しみだ。
満足気な透と風呂を出て寝室に戻る前に湧の様子を見ていく。
すやすやと眠る顔は赤ちゃんの頃から変わっていない、今も赤ちゃんのようなものだが大きくなったものだ。
「…最近潤也さんに似てきましたね」
「そうか?」
「はい、幼稚園に入ったらモテモテですね」
「…モテモテもいい事ばかりじゃないぞ」
何せ家以外で落ち着けるところが無くなる。
バレンタインなんかは戦場だ、行く先々に人がいて恐ろしいの一言だ。
何事も程々が1番と思う。
「モテモテの方の気持ちは分かりません」
「透もモテただろう?」
「僕は…オメガですし、それほどモテませんでしたよ。友達と一緒にお菓子を作って配ってました」
「それほど?…数人はいたということか」
「経営者の子達が集まっていたので…べつのクラスはアルファが多かったんです、告白してくれる方も何人か」
「オメガは少ないですし、珍しくて匂いもあったんでしょう」と懐かしげに笑う彼。
いや、モテたのはそんなせいじゃない。絶対に透自身に惹かれたに違いない。
俺も歳が近ければ同じ学校に入れたかもしれない。そうすれば変なやつらに声をかけられる前に俺が守ってやったのに。
そういえば彼の過去は知らない。
無論、過去がどうであろうと俺の彼を思う気持ちには関係ないが…単純な興味だ。
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