こっち見てよ旦那様

文字の大きさ
上 下
95 / 219
30

....

しおりを挟む


彼の言葉に驚く。
あまりに前のことで発情期は忘れていた。

最後に透の発情期が来たのはもう1年以上?2年弱も前になるだろうか。

 「あ、あぁ…発情期か。確かに湧も1歳…早いな」

「本当ですよ。…僕も定期検診に行ったらそんなことを言われてびっくりです。ほんとに、早いですね」

「…発情期の時はどう過ごす?」

すり、と彼の頭に頬を擦り寄せ尋ねる。1週間、休暇を取って湧の世話を…いや、その間透は放ったらかしか?

「抑制剤飲んで…ぼちぼち家で過ごそうかと思います。以前貰っていたものを飲めば多少しんどくも動けますから」

「けど匂いますよね」と心配そうな透を振り向かせる。

「お前が飲むなら俺も薬を飲む、発情期ヒート休暇も取るし…湧の面倒も家事も俺がやる、頼りないかもしれないが…存分に俺を使ってくれ」

真面目に語ってしまった。
俺が頼りないからか、仕事が詰まっているからか、湧が産まれてからは一層、彼は強く1人で進めるようになってしまった。

俺のせいかもしれない。
それでも俺は彼の為なら何でもするし、何でも覚える。

じっと彼を見ていると彼がふふ、と笑い出す。

「これ以上ないくらい、潤也さんは頼りがいがありますよ。たくさん助けてもらおうかな…でもまだ少し先と思いますし、ゆっくり決めましょう」

「あぁ…!もっと頼ってくれ、お前はもっともっと甘やかされるべきだ。…どんどん遠くに行ってしまいそうで…モデルの写真…」

しまった、口を滑らせた。

「なんで…もしかして、見たんですか?」

「あ、あぁ…えっと…廣瀬に見せてもらってな」

「恥ずかしいです!…隠してたのに」

「家にあるのか?」

「何冊かあります…」

「風呂から出たら見せてくれるか」

「…もう見たんでしょう」

透がむくれてる。
とても可愛いがやはりもう一度俺は写真を見たい。

「お願い聞くから、頼む!」

「言いましたね?…わかりました、出たら見せてあげます」

彼のお願いなら何時何時も聞くのだがな。
彼のお願いが楽しみだ。

満足気な透と風呂を出て寝室に戻る前に湧の様子を見ていく。
すやすやと眠る顔は赤ちゃんの頃から変わっていない、今も赤ちゃんのようなものだが大きくなったものだ。

「…最近潤也さんに似てきましたね」

「そうか?」

「はい、幼稚園に入ったらモテモテですね」

「…モテモテもいい事ばかりじゃないぞ」

何せ家以外で落ち着けるところが無くなる。
バレンタインなんかは戦場だ、行く先々に人がいて恐ろしいの一言だ。

何事も程々が1番と思う。

「モテモテの方の気持ちは分かりません」

「透もモテただろう?」

「僕は…オメガですし、それほどモテませんでしたよ。友達と一緒にお菓子を作って配ってました」

「それほど?…数人はいたということか」

「経営者の子達が集まっていたので…べつのクラスはアルファが多かったんです、告白してくれる方も何人か」

「オメガは少ないですし、珍しくて匂いもあったんでしょう」と懐かしげに笑う彼。
いや、モテたのはそんなせいじゃない。絶対に透自身に惹かれたに違いない。

俺も歳が近ければ同じ学校に入れたかもしれない。そうすれば変なやつらに声をかけられる前に俺が守ってやったのに。

そういえば彼の過去は知らない。

無論、過去がどうであろうと俺の彼を思う気持ちには関係ないが…単純な興味だ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)

Oj
BL
オメガバースBLです。 受けが妊娠しますので、ご注意下さい。 コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。 ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。 アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。 ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。 菊島 華 (きくしま はな)   受 両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。 森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄  森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。 森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟 森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。 健司と裕司は二卵性の双子です。 オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。 男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。 アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。 その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。 この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。 また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。 独自解釈している設定があります。 第二部にて息子達とその恋人達です。 長男 咲也 (さくや) 次男 伊吹 (いぶき) 三男 開斗 (かいと) 咲也の恋人 朝陽 (あさひ) 伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう) 開斗の恋人 アイ・ミイ 本編完結しています。 今後は短編を更新する予定です。

氷の魔術師は狼獣人と巣ごもりしたい

ぷかり
BL
魔塔所属のエリート魔術師サリウスは任務の帰り吹雪に合って行き倒れたところを狼獣人のリルに拾われた。 リルの献身的な手当てによりサリウスは英気を養い職場のある王都に帰るが、もう会うことのないと思っていたリルの温かさが恋しくなり、度々リルの元を訪れるようになる。 そんなある日、サリウスはリルの発情に巻き込まれてしまう。 オメガバースの設定をお借りしております ムーンライトノベルズさまにて別タイトルで完結済です

あなたの運命の番になれますか?

あんにん
BL
愛されずに育ったΩの男の子が溺愛されるお話

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

処理中です...