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しおりを挟む「ぶーぶー」
「ぶーぶー乗ろうね」
潤也さんがベビーカーを積み込んでいる間に湧をチャイルドシートに乗せ、窓のカーテンを閉める。
紫外線防止なので閉めてもメッシュ越しではあるが外の景色も見える。
お気に入りのぬいぐるみと動物園の絵本を抱えてご機嫌だ。
「無事乗ったか?」
「はい、ベビーカーありがとうございます」
「あぁ。よし、じゃあ行くか」
湧の隣に座り彼も運転席に着く。
一応自分も免許は持っていたし、実家にいた時は運転もしていたのだが、出かける時はタクシーを使えばいいと潤也さんが言うので車は最近運転していない。
「湧もいるし僕も車買った方がいいですかね」
「そうだな…俺や廣瀬がいない時もその方が安心だろうしまた見に行こうか」
大きな家が立ち並ぶ通りを抜けてしばらく走ると大きな道路に出る。
最初は機嫌が良かったものの、途中で少しぐずったのであやしたら寝てしまった。
「…お昼寝してる時間だもんね」
すやすやと眠る湧を撫でてカーテンを閉めると後部座席は薄暗くなった。
湧が起きないように小声で話していると、あっという間に時間がすぎて少し先に動物園の看板が見えてくる。
「そろそろ起こしますね」
直前に起こして泣かれてもなので、カーテンを開けて少しづつ起こそうと思い声をかけると案の定少し不機嫌だ。
「ほら湧、着いたぞー」
駐車場に車を止めてベビーカーを下ろしながら潤也さんが声をかける。
寝ていたところを起こされてぼんやりしていた目も少し開いてキョロキョロと周りを見回している。
しっかり帽子をかぶってもらい、外に出て様々な動物の描かれたゲートを見るとたちまち湧の顔が輝く。
「じょー!」
「そうそう、ぞうさんだね。今から見に行くからにっこりしてね」
つんつん、とさっきまでムスッとしていたほっぺをつつくと楽しげに笑ってくれる。
かわいいなぁ、
「中に入るまでは危ないから乗ってような」
「ぁーい」
ご機嫌で大人しくベビーカーにも乗り、入園ゲートをくぐる。
平日で人も少なくて良かった。
入口から歩いて最初にいたのは像。ちょうどみんなで外に出てごはんタイムだったのか、湧は大興奮。
「あえ!!!おっちぃね!」
「おっきいなぁ、ぞうさんだぞ」
「ぱおんぱおんは?」
「そうだなぁ…」
何故パオーンとなかないのか?と真面目な顔で問われ、困る潤也さん。
「今はみんなでごはんだからパオーンって言わないんだよ」
しばらく困る潤也さんを堪能した後助け舟を出す。
「パパぞうさんと、ママぞうさんと赤ちゃんぞうさん。…湧とパパとママと一緒だね」
「いっちょ?」
「そうだ、みんな仲良しだな」
うん!と元気よく頷く湧はその後、ベビーカーを降りると聞かなくて降りたはいいものの、終始ぴょんぴょんしたりとはしゃいでいた。
潤也さんに湧を見てもらって、自分はベビーカーを押しつつ写真を撮った。
湧が産まれてから、仕事の合間にアルバムを作っている。リボンやコメントなんかを添えて作っているのだが、写真が多すぎて困っているくらいだ。
「コメントは初めての動物園でおおはしゃぎ、かな」
手を引かれてあたふたする彼と、よちよちとした足取りではあるが力強く歩く湧の後ろ姿を見て微笑んだ
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