こっち見てよ旦那様

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「まぁま」

洗い物やお昼の準備をしているとカラカラと音がしてスボンを引っ張られる。
お気に入りの手押し車を押してここまで来たようだ。

手を止めて湧と目線を合わせしゃがみこむと一生懸命言葉を発してくれる。

「ばっぱ?…なーない」

「そうだね、パパはお仕事」

半分はまだ解読が難解な言葉の時もあるが、こうしてお話ができるのが楽しい。
ただ、パパのことをバッパと言うのが面白い。

可愛いのでぼちぼち訂正はするものの、そのまま気がつくまでいてくれと思いもある。

「こぇ」

「絵本?…じゃあお皿綺麗にするからいい子できる?」

「いーこいーこ」


差し出してきた絵本を待つように言うと、オウム返しのようにいい子。と繰り返す湧。
カラカラとキッチンの入り口に置いてある小さな椅子に手押し車を引いていき載せていたおもちゃで遊び始めた。
ご機嫌で待ってくれているうちに済ませよう。

駆け足気味で洗い物を済ませ、よっこいせと湧が抱き上げる。

「お待たせ、どれ読むの?」

「こぇ!」

ソファに座り、膝の上にのせると元気よく差し出してきたのはお気に入りの本。
動物園の本だ。

最近一日に何度も催促するので、潤也さんが「今度の休みに動物園に行こうか」と言っている。
動物園デビュー。

想像すると楽しみだ。同時に、怖くて泣いてしまわないかと心配もある。

もうすぐ1歳。
この子が生まれてもうそんなに経ってしまう。
あっという間にこうして膝に乗ることも無くて、1人で走っていってしまう時が来る。

幼稚園にもいったらまたあっという間に小学校。気が付いたら大人になってしまう、なんてあるんだろうか。

「いーこいーこ」

「うん、いい子いい子だね。湧もいい子いい子」

こしょこしょー!とくすぐると赤ちゃんと時よりも大きな仕草で笑い、手足をばたつかせる。

「湧、そろそろ ご飯食べようか」

「たん?」

「ううん、今日はおにぎり」

「おにりり」

可愛い…

「湧、お魚は?」

「じょじょじょ!」

某魚のお兄さんをテレビで見てお魚と言えばギョギョギョ!になった訳だが。
上手くいえなくてじょじょじょになっているのが愛しい。

水族館にも連れていきたいな。
湧をダイニングのベビーチェアに座らせ予め作って覚ましておいたミニサイズのおにぎりや作り置きの湧用のおかずをお皿に出す。

まだ上手に食器は使えなくて机の上はいつも大惨事だ。

 ご飯用のよだれかけを付けて、早々におにぎりに手を伸ばす湧に「まだだよ」と言い聞かせ支度を終わらせる。

「はい、いただきます」

「ます!」

可愛いその言葉から数十分後。
机の上はおかずやおにぎりのふりかけで彩られていた。



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