70 / 219
23
.
しおりを挟む「三ツ橋様、パーティーが始まりますのでご案内致します」
会場であるホテルの一室に通され、待つこと1時間ちょっと。
係の人が呼びに来てくれて、そのまま会場へと歩いていく。
「透…!」
「潤也さん、休憩ですか?」
「あぁ。…お前を迎えに来た」
「ありがとうございます」
「じゃあ行こうか」
ロビーまで迎えに来てくれた彼と会場へ入ると楽しそうな話声や食器の音で賑わっていた。
「立食式だ、挨拶されるだろうから暫くは一緒にいよう」
彼に並んで真っ白なお皿に料理を少しづつ丁寧に盛って戻ってくると黒い燕尾服の朗らかな初老男性が話しかけてくる。
「三ツ橋さん、先程はどうもお世話になりました。どうぞ楽しんでってくだされ」
「いえいえ、お互い様ですから。…こちら、妻の透です。…透、主催者の」
彼に紹介され、微笑んで頭を下げる。主催者の方か…、確かに柔らかそうな人だ。だからパーティーも堅苦しくなく明るいのだろうかなんて考えてしまう。
「おお、一度お会いしましたね。…ほら、1年くらい前でしょうか」
「…あ、あの時の。失礼しました、ご無沙汰しております、この度はおめでとうございます」
まだ新婚だった時だ。確かあの時潤也さんが威嚇して…その後に両思いって分かったんだっけ。
「いいんですよ、また会えて嬉しいです。…ありがとうございます、透さんは確かデザインの仕事を?」
「はい、仕事といっても大したことは無いのですが」
「またご謙遜を。…娘が貴方のブランドを愛用していてですね、最近では妻も好んで身につけていますよ」
「それは…ありがとうございます…!」
まさか褒めて頂けるなんて。
嬉しくてほくほくしていると「良かったな」と潤也さんにも囁かれる。
「…後日、モデルの廣瀬さんとのコラボブランドの展示販売がありますので良ければ奥様と娘様に」
余計なお世話だっただろうか、と心配になりつつカバンに入れていたチケットを一応3枚手渡すと快く受け取ってくれた。
「では、他にも挨拶に回ってきます。またお話に来ますからその時に詳しく聞かせて貰います」
パタパタとグラス片手に手を振って呼ばれた方へ行ってしまった。
その後もひきりなしに潤也さんへ声はかかった。主賓に近い彼だ、仕方がないだろう。
知らない人ばかりだったが、自分のことを知ってくれている人もたくさんいて嬉しかった。
発表への不安が少し和らぐ気がする。
その後、パーティーは少し遅くまで続き、廣瀬さんは約束の時間になるとキッパリ帰ってしまった。
透君と海來くんが待ってるもんなぁ、なんて微笑ましく思っていると湧に会いたくなる。
いまはもうとっくに寝ている時間だろう。
明日の午後には会える。
そう分かっていても恋しくなってしまう。
潤也さんも同じだろうか、 そう思いながら彼を見上げていると彼が奥の方にいる家族四人で仲良く出席しているところを見ている。
「…湧に会いたくなるな」
「そうですね、僕も思ってました。」
「いつかはみんな一緒に参加して、自慢の家族を鼻高々に自慢してみたい」
「その頃には湧も潤也さんに似て格好良くなってますよ」
そうか、と照れ気味に笑う彼の垂れてきた前髪を手櫛で直し自分も笑って頷く。
絶対湧は潤也さん似だろう。
今の時点でももうそっくりなのに…。
6
お気に入りに追加
1,510
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる