60 / 219
19
...潤也目線
しおりを挟む夜。深夜1時頃だろうか
湧の大きな鳴き声で再び目が覚める。
「…起きちゃいましたね。…さっきミルクあげたばっかなのでオムツかも」
隣でモゾモゾと眠たそうに透が起き上がる。
俺が帰宅したのは11時過ぎ。在宅ワークというものの、副社長という立場上、何日かに1回は出社しなくてはならない。
早く帰ろうと思っていたのだが、トラブルやらなんやらが重なりこんな時間になってしまった。
透に無理をさせたくはないのに…。
帰宅すると泣いていたであろう湧を抱っこした透がソファへ座っていた。
「ほんとは立ってあやしたいんですけど…なかなか長時間は辛くて。」
例のゆりかごで寝てくれることは稀だ。
ちょっとしたグズりなんかは収まるが、泣いてしまうと抱っこでないと駄目だ。
明日は在宅ワークだし、透の体も心配だ。
「俺があやす、透は寝てて大丈夫」
そっと透を横たえ頭を撫でる。
「ありがとうございます」と笑い秒で寝てしまった彼の寝顔を眺めたいのも本音だが先に我が子の寝顔を拝まなくては。
隣にあるベビーベッドから湧を抱きあげリビングへ連れていく。
少しでも透を静かなところで寝かせたい。
オムツを変えてもなお泣き続ける湧を抱っこしてあやす。
育休を取れてよかった、と心から思う。毎日透に任せ切りなんて信じられない。
しばらく揺れているとようやく泣き止んだ。
が、寝室に戻って再度寝かせようとするとまた泣き始める。
まあ…仕方ないか、ともう一度抱いてリビングへ戻った。直ぐに泣き止んだものの、また戻せば起きてしまう。
ソファに座って抱いているといつの間にか寝てしまったらしい。
「潤也さん、潤也さん。」
透の声掛けで目が覚める。
ハッとして湧に目を戻すと湧は目を覚ましてこちらを可愛らしく見上げていた。
その顔を見るとどうしても疲れが吹っ飛んでしまう。
「すまん…寝てたな」
「いえ、代わります。…任せちゃってごめんなさい」
「いや、普段お前にしてもらってるから家にいる時くらいやりたい。」
「ありがとうございます。…ほら、ここで寝てたら風邪引きますよ。僕も寝室行きますから」
湧を彼に預け、一緒に寝室へ戻る。
時計を見ると3時半。
ベットに座る彼の傍に寝転びウトウトする。彼の匂いと小さな鼻歌。
気がつくと俺はぐっすり眠っていた。
16
お気に入りに追加
1,507
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる