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しおりを挟む手術を終えてはや3日、手術の痛みはかなり楽になったと思う。
が、1日に何度もある母乳を絞るのはなかなか慣れない。お乳の出がいいらしくて助かったと思う。
多少は痛みはある程度無くなったが、自分で自分の胸を絞るという行為になんとも言えない感情だ。
だがそれも今日で終わりだ。
今日の午後から授乳をするらしい。旦那さん待ちますか?と聞いてくれたのでそうしてもらう事にした。
ちなみに、見られることに抵抗はない。むしろ彼の方が赤面してしまう。
湧のこともガラス越しではあるが見に行くと寝ていたりモゾモゾと動いていたり。
大事をとって長めの経過観察も無事終わりに近づき、明日からは本格的に自分でのお世話を教えてもらうことになっている。
大変とは分かっているが、同時に楽しみでもある。
そんなことを思いつつ溜まっていたメールを確認していると病室のドアがノックされる。
「やっほ透!」
「楓斗くん!」
尋ねてきてくれたのは楓斗くん。
彼は自分より日程を早めに取るらしい。なんとも、お腹の張りが強く、お腹の子の成長が少し早いとのこと。
1週間後に手術と言っていたが、念の為入院していると言っていたが、来てくれるとは思わなかった。
「安静にしててって言われたけど、動かなさすぎもあんまり良くないからさ、少し散歩。暇なんだよね」
「そっか、無理しないでね。…今から僕も散歩しようかな、子供見に行くけど行く?」
「行きたい、まだ見てないんだよね。早く湧くんに会いたい」
ちょっとした散歩がてら新生児室の前へ行き、ガラス越しに湧を眺める。
「うわぁ…可愛い…!」
「湧は小さかったけど…海來君はおっきいんだよね」
「そうそう、全く…態度でかいのはパパ似か?」
なんて冗談をいいつつお腹を撫でる風斗君と笑い合う。
確かに楓斗君のお腹は大きい。赤ちゃんが大きいのは喜ぶべきことなのかもしれない。が、その分大変なのも事実だ。
「翼さんすごく心配してなかった?」
「してるしてる、お見舞い来るなりお腹に付きっきりだよ」
「あー、分かる。ちょっと複雑だけど可愛いよね」
「そうなんだよな…赤ちゃんふたりみたいな」
わかる、と2人で頷く。
その後談話室で休憩して楓斗君は病室へ帰って行った。
入れ違いで、病室へ入ってすぐに潤也さんが来てくれた。
「…今から初めての授乳なんですけど行きますか?」
「あ、あぁ。行きたい」
荷物を入れ替えて、冷蔵庫にいろいろ仕舞ってくれる彼に聞いて看護師さんを呼ぶ。
新生児室のカーテンに仕切られた一角に入ると一通り説明を受け、看護師さんが湧を連れてくるべく出ていった。
「その…俺が見てても大丈夫なのか?」
落ち着かない様子で彼が口を開く。
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