こっち見てよ旦那様

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「いたた…」

お腹が張ってきた。
しばらく横になれば治るのだがなかなか慣れない。
今までにも多少の張りはあったが、最近は強い張りがある。

ゆっくり仕事部屋のソファへ横になり体を丸めていると潤也さんが入ってくる。

「透、お茶持ってきた…大丈夫か?痛い?」

「潤也さん…あの…いつもの」

「まかせろ」

頷いて頭元に腰掛けた彼の膝の上に頭を乗せ、下腹に顔を埋める。
優しくお腹をさすって頭を撫でてくれる彼に甘えること数分張りが引いてきた。

「…治まってきました」

「そうか。…もう仕事終わったのか?」

「はい。急ぎの仕事じゃないので…」

「じゃあもう少しこのままでいてくれ」

彼の匂いと体温が落ち着く。
昨日、手術の日程が決まった。

男性オメガということもあり、大事をとって早めに手術をすることになった。
他にも前後に余裕を持っての入院が決まった。

「…入院したら毎日お見舞い行くからな。…元気でいてくれ。」

「急にどうしたんですか」

昨日から彼が心配そうだ。
リスクが高いから…とかそういうのかとは思う。自分だって不安だが、彼はもっと不安そうだ。

「…心配なんだ。日程が決まって…やっと会えるのが嬉しいのにもしかしたらお前が居なくなってしまうんじゃないかと思うと怖い…」

「潤也さん…」

子供のような顔の彼をそっと腕を伸ばして撫でる。

「大丈夫ですよ。…僕元気でいますから、安心してください」

「あぁ…」

ぐすぐすと僕の手に頬を擦り寄せる彼。
もう既に赤ちゃんが1人いるみたいだ。入院まで3週間程あるがそれまでゆっくり準備をしよう。

「…僕頑張るのでそれまでめいっぱい甘やかしてください。…僕も潤也さんのこと甘やかしますから」

「もちろんだ、たくさん甘えてくれ。」


子供部屋やクローゼットには赤ちゃんのオムツやその他ベビー用品が増えている。
貰ったり、自分達で買ったものもあるが、何より使うのが楽しみなのは電動ゆりかご。
お義母さん達が買ってくれた物だ。

遅れてお祝いをくれたのは実家。意外にも可愛らしいおむつケーキを兄が持ってきてくれた。
兄との関係は悪くない。が、なかなか忙しくて会ったのは久しぶりだった。
忙しいけれど産まれたら会いに来ると言って別れた。

兄は実家の経営を立て直すのに忙しく働いていた。そのおかげか、政略結婚もあってか何とか建て直したみたいだが右肩上がりを目指してまだ忙しく奔走らしい。

「…今度は俺も義兄さんに会いたい。あの人とは気が合いそうだ、廣瀬とは相性悪そうだが」

「っあはは、確かに。怖そうですね」

2人ともにこやかな怒り方しそうだもんな、と想像してみる。
廣瀬さんと兄の火花が散る間に潤也さん。
潤也さんは気の毒だが見ていて少し笑ってしまうかもしれない。

そんな冗談を言いあって笑いあっているとゆうがお腹を蹴った。
もうすぐ会えるね、と語りかけながら甘えたがりを続行した。
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