49 / 219
16
.
しおりを挟む「いたた…」
お腹が張ってきた。
しばらく横になれば治るのだがなかなか慣れない。
今までにも多少の張りはあったが、最近は強い張りがある。
ゆっくり仕事部屋のソファへ横になり体を丸めていると潤也さんが入ってくる。
「透、お茶持ってきた…大丈夫か?痛い?」
「潤也さん…あの…いつもの」
「まかせろ」
頷いて頭元に腰掛けた彼の膝の上に頭を乗せ、下腹に顔を埋める。
優しくお腹をさすって頭を撫でてくれる彼に甘えること数分張りが引いてきた。
「…治まってきました」
「そうか。…もう仕事終わったのか?」
「はい。急ぎの仕事じゃないので…」
「じゃあもう少しこのままでいてくれ」
彼の匂いと体温が落ち着く。
昨日、手術の日程が決まった。
男性オメガということもあり、大事をとって早めに手術をすることになった。
他にも前後に余裕を持っての入院が決まった。
「…入院したら毎日お見舞い行くからな。…元気でいてくれ。」
「急にどうしたんですか」
昨日から彼が心配そうだ。
リスクが高いから…とかそういうのかとは思う。自分だって不安だが、彼はもっと不安そうだ。
「…心配なんだ。日程が決まって…やっと会えるのが嬉しいのにもしかしたらお前が居なくなってしまうんじゃないかと思うと怖い…」
「潤也さん…」
子供のような顔の彼をそっと腕を伸ばして撫でる。
「大丈夫ですよ。…僕元気でいますから、安心してください」
「あぁ…」
ぐすぐすと僕の手に頬を擦り寄せる彼。
もう既に赤ちゃんが1人いるみたいだ。入院まで3週間程あるがそれまでゆっくり準備をしよう。
「…僕頑張るのでそれまでめいっぱい甘やかしてください。…僕も潤也さんのこと甘やかしますから」
「もちろんだ、たくさん甘えてくれ。」
子供部屋やクローゼットには赤ちゃんのオムツやその他ベビー用品が増えている。
貰ったり、自分達で買ったものもあるが、何より使うのが楽しみなのは電動ゆりかご。
お義母さん達が買ってくれた物だ。
遅れてお祝いをくれたのは実家。意外にも可愛らしいおむつケーキを兄が持ってきてくれた。
兄との関係は悪くない。が、なかなか忙しくて会ったのは久しぶりだった。
忙しいけれど産まれたら会いに来ると言って別れた。
兄は実家の経営を立て直すのに忙しく働いていた。そのおかげか、政略結婚もあってか何とか建て直したみたいだが右肩上がりを目指してまだ忙しく奔走らしい。
「…今度は俺も義兄さんに会いたい。あの人とは気が合いそうだ、廣瀬とは相性悪そうだが」
「っあはは、確かに。怖そうですね」
2人ともにこやかな怒り方しそうだもんな、と想像してみる。
廣瀬さんと兄の火花が散る間に潤也さん。
潤也さんは気の毒だが見ていて少し笑ってしまうかもしれない。
そんな冗談を言いあって笑いあっているとゆうがお腹を蹴った。
もうすぐ会えるね、と語りかけながら甘えたがりを続行した。
29
お気に入りに追加
1,510
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!


子を成せ
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
ミーシェは兄から告げられた言葉に思わず耳を疑った。
「リストにある全員と子を成すか、二年以内にリーファスの子を産むか選べ」
リストに並ぶ番号は全部で十八もあり、その下には追加される可能性がある名前が続いている。これは孕み腹として生きろという命令を下されたに等しかった。もう一つの話だって、譲歩しているわけではない。

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる