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しおりを挟むつわりに苦しみながらも、少し楽な日は出来ることを体調がいいうちにやっていた。
産休たるものをとり、そのための資料や連絡をしているとあっという間に時間はすぎてしまう。
お義母さんとお義父さんは妊娠をとても喜んでくれた。
実親はと言うと祝いの言葉はくれたがそれこそ素っ気なかった。まあ、期待はしていなかったのでいい。
子供がオメガということを利用して会社のために拒否権なく嫁がせる家だもんな、なんて苦笑する。しかしそれで潤也さんと出会えたと考えたら感謝すべきなのだろうか。
今となってはつわりも落ち着いて、楽な日が続いている。完璧に食欲があるとは言えないが、それなりのものを少しづつ食べられるようになった。
最近のお気に入りは湯豆腐だ。ポン酢をかけると酸味で食べやすい。
お腹がだいぶふっくらしてきた。
お義母さんから頂いたマタニティ下着にゆった利した服で最過ごしている。
今まで通りに服を着ていると、お腹が気持ち苦しかったりする。
本当にお腹にいるんだなと思うととてつもなく愛しくなったりする。
今日は検診に行った。
その際に話されたことを彼にも話さなくてはならない。
「ただいま透。…体調どうだ」
「おかえりなさい、大丈夫ですよ。検診行ってきました」
リビングでお茶を飲みながら彼の支度が終わるまで待つ。
「そうか、どうだった?」
彼が隣に座るとエコー写真を見せる。
「順調らしいです。気は抜けないって言われましたけど、今までよりは安心です。…あと、お産についてなんですけど」
「良かった…ありがとうな、透。…あぁ、どうした」
「男性オメガは危険なので帝王切開が主流なんです。僕もそうしようと思うんですけど一応相談しようと思って」
「そうだな、お前や子供に危険があっては俺が堪らない。」
お腹を撫でて、キスを落とす彼の頭を撫でる。
こうしてみると彼まで子供みたいだ。
「…今でも夢みたいだ。お前との子供がここにいるなんて…」
「そうですね…。名前とか、部屋のこととか…たくさん決めていかないとですね」
「そうだな。…部屋は別々にしようか、赤ちゃんの時は寝室で寝ればいいが、早い頃から自分の部屋で寝る習慣を身につけた方がいいと思う」
「僕もそうでした。欧米式ですね、いいと思います。潤也さんとの時間も、子供の時間も作れますしね」
そんなことを話しつつ、彼は相変わらずお腹を撫でたりキスしたりを続けている。
「潤也さん…子供が可愛いのは分かるんですけど、お腹ばっかりじゃなくて僕のことも構ってください」
なんて言ってみると、キョトンとした彼がすぐに笑顔になり、体を起こす。
「そうだったな…お前も子供と同じくらい可愛い。愛してるからな」
そう言って撫でたりキスをしてくれる。
子供が生まれても、どれだけ歳をとってもこうして居られたらな…と思った。
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