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しおりを挟む「透、俺も手伝わせて」
「お客さんなんだからいいのに…」
「いいって、夕飯ご馳走になるのにそれくらいさせてよ。…それに、旦那らは惚気始めたからな」
「うわ…その場にいるのはちょっときついね」
「そうなんだよな…で、何すればいい?ある程度は出来るよ」
「じゃあ…冷蔵庫に下ごしらえしてるチキンがあるからオーブンで焼いてくれるかな。台所にあるのは自由に使っていいから」
「おっけー」
楓斗君と話をしながら台所に立つ。
楓斗君は料理もできるのか。何でも出来てすごいな…なんて思いながら彼の話を楽しむ。
潤也さんのこと、翼さんのこと、お仕事のこと。彼とはかなり気が合う。
「…そういや、透は次の発情いつ?」
「来月の最後ら辺かな、予定は20から」
「へぇ…!じゃあ俺と近いね。俺はその次の次の週くらい」
「そっか、大変だよね。…今回、結婚して初めてだし…ちょっと緊張してる」
「え!そうなの?…いい事じゃん。お互い燃えるんじゃないかな。…番にはそのときなるの?」
「その予定」
「うわー…おめでとうだ!。番できたら結構いろいろ安定するから楽になると思うよ、お医者さん曰く、ホルモンが安定する!とか」
「そうなんだ…。やっぱ発情前って予兆出たりするよね」
「わかる~、女の子の生理みたいだよね」
「ほんとに。…楓斗君は子供の事とか話すの?」
思い切ってきいてみる。
初めてのヒートで、番になって妊娠する…?。自分的にはいろいろと幸せなのだが、いろいろ詰めすぎではないだろうか。
「…この前したかな、子供は欲しいって言われたけど…勿論俺も欲しいよ。けど俺、親とも疎遠だし、翼も忙しい…ってなると不安なんだよな」
「そっか…。僕もそれは心配かも」
「だよな…」
「でも、何か困ったらうち来てよ。僕はほとんど家にいると思うし。…もしお互い子供が出来ても助け合えたらな…なんて」
「うわぁ…めっちゃ嬉しい。透まじで良い奴だよね。…じゃあ透も俺のこと頼れよ。俺は仕事で出かけてること多いけど…オフの日はほんと暇だし」
こんな風にいろいろ話し込んではいたが、お互い手は進めていたのであと10数分で用意が終わる。
人数分の食器をカウンターにとりあえず出していると先程まで話していた潤也さんと翼さんがやってきて運んでくれる。
「任せて悪い…これは俺らがやっとく」
「ありがとうございます。…あと少しで出来そうなので」
「そうか」
オーブンから漂う香りに潤也さんが目を細める。年よりずっと無邪気な笑い方。
自分のお気に入りの表情だ。
お茶を取りに来て背後で楓斗君に擦り寄る翼さんも翼さんでなかなかだ。
「馬鹿」と楓斗君にはたかれているがめげずに抱きついているらしい。
「…楓斗さんとは仲良くなれたか?」
「はい、とっても。お話楽しかったですし…友達になれました」
「そうか」
微笑んだ彼に頭を撫でられる。
少しはしゃぎすぎたか、と緩んだ頬を治していると「お前が嬉しそうで俺も嬉しい」と囁かれる。
まったく、そういうところだ。
うちの旦那様には困ってしまう。
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