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3 潤也目線
透目線
しおりを挟むパーティも終わり、自宅でシャワーを浴びて寝室に戻ると思わぬ言葉を潤也さんにかけられる。
「…お前と話したい」
驚きすぎて、夢かと思ったくらいだ。
しかし、話そうと思ったもののなかなか話題が出てこなかったのか悩む彼が可愛らしくて笑みが漏れてしまう。
「…なぜ笑う?」
むすっと拗ねた表情の彼が尋ねる。なんて愛しいのだろう。
パーティではあんなに紳士に客人の相手をしていたのに、家ではこんなに可愛らしいなんて。
「…そういえば…今日、助けてくれましたよね。なんで気づいたんですか」
ふと、パーティでの出来事を思い出して尋ねてみる。
正直、あんなに間近でアルファの威嚇を見たのは初めてだった。自分に対しての威嚇ではないのに体が動かず痺れるような感覚があった。
一瞬、獣のような彼を見た。強いアルファの性がむき出しの彼は自分のオメガ性を引き出すような気がした。
彼に従いたいような、彼との子を宿したい…なんて本能的に思ってしまう。
何を馬鹿な、まともに触れても貰えないのに子を成すなんて。無理だ。
もちろん、彼との子供を欲しいと願う時もある。が、なかなかそうはいかないのだ。
「…気がついたら、止めてた。…パーティにはアルファが多かったから警戒はしてた。…けど、お前が触れられているのを見て…嫌で仕方なくてつい。…威嚇、怖かったよな…すまない」
「嫌われても仕方ないよなな」なんて小声で呟いた彼の言葉を僕は聞き逃さなかった。
「嫌いになんてなりませんよ、ずっと…嫌いなことなんてありませんから」
思わず訂正してしまう。
慌てて口を噤む。言ってしまった…。彼自身は僕のことをどう思っているのだろう。
そんなことも曖昧なのに言ってしまった。
恥ずかしい。
「…俺は…お前に嫌われるのが怖かった。惚れた弱みというやつだ。…初めてあった時、一目惚れだった…から」
思わぬ告白に嬉しやさ驚き、感動も何もかもが混じって涙がこぼれる。
「っな、…なぜ泣く」
「…嬉しくて。…僕も会った時から潤也さんのこと好きでしたよ…今も」
「そ…うか。…なんでだろうな、俺まで涙が出る」
少しぼやける視界で彼を見る。
なんとなくだが、彼の目にも涙が少し滲んでいるのだろう。
隣のベットに腰掛ける彼がゆっくり隣に来る。
「…お前を…愛してる」
低く、掠れた彼の声に胸が締め付けられる。やっと言ってくれた。
涙を拭うと彼の頬に光る滴を指で掬いとる。
「僕も… 愛してますよ」
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