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しおりを挟む朝7時半
今日はゆっくりと目を覚ます。
いつもは6時に起きて簡単な朝食を彼に作る。
が、今日は2人とも休みなのでゆっくりめ。潤也さんを起こさないように目覚ましを止めて洗面所で顔を洗う。
今日はサンドイッチを作ろうかと思う。
いや、せっかく色々揃っているのでホットサンドにしようか。
彼が起きてきたら焼いて、焼きたてを出せばいい。
下準備だけしておこう。
具は卵、チーズとハム、茹でキャベツとウィンナー。
ひとつずつ作って半分ずつ食べよう。
具は余ったら明日の僕の昼ごはんにすればいい。
「…おはよう」
「おはようございます、ご飯用意しますね」
寝癖のついた潤也さんがリビングへ現れる。
相変わらず目を逸らされるが挨拶をしてくれた、少し嬉しい。
温めておいたホットサンドメーカーにパンをセットして珈琲を用意していると台所へそっと入ってきた潤也さんに指で控えめに背中をつつかれる。
「…手伝う…なんか運ぶものとかあれば」
意外な言葉に驚くも食器を並べてもらうことにした。
ペアになっている食器のセットは、嫁いだ時からこの家にあったものだがお気に入りだ。誰が選んでくれたのだろう。
潤也さんに聞いてみようかなとテーブルにナイフとフォークを並べる彼に目をやる。
…とても一生懸命だ。
淹れた珈琲をテーブルに持っていき、焼きあがったサンドを切ってみる。
熱々のサンドから香るいい匂いととろりとチーズが溢れ出す。
美味しそう、と自画自賛しているとじっとこちらを見つめている潤也さんがいる。
まあ、目線の先は僕ではなくホットサンドだったのだが。
溢れるチーズをキラキラとした目で見ているのに胸がキュッとなる。
「冷めないうちに食べましょうか」
表情はいつもの通り固いままだが目が好奇心を物語っている。
2人で向かい合う形で席について食べ始める。焼きたての外はサクサク中はふんわりのパンに熱々の具材がマッチして美味しい。
今度は他の具材を試してもいいかな、なんて思いながら彼に「…この食器は誰が選んでくれたんですか」と尋ねてみる。
顔を上げた彼がもじもじとフォークを置き、珈琲を手に取りながら目を逸らした。
「…俺だが…その、気に入らなかったらお前の好きなように変えてもいい」
「そんなことないです、とっても気に入っているので嬉しくて」
彼が選んでくれたのか、と事実にまたもや驚いてしまった。それでは仕事場の家具も?と尋ねてみる。
「お前の…過去の仕事の作品とかを見て…ああいった物が好きなのかと思った」
まるでダメだったか…?とでも言いたげな、こちらの様子を伺う子犬のようだ。
公の場とはまるで違う彼の態度に少し優越感が生まれる。自分だけが彼のこの表情を見れるのだろうか、そうであって欲しいと。
「…嬉しいです。ミシンも揃えてもらって、とっても感謝してるんですよ」
少し照れくさいけれど、なかなか話す機会もなかったのでお礼をする。
他にも話したいことは沢山ある、けれど今はこれで充分。これこらもっと、ゆっくり話していこうなんて気が遠くなる。けれどそれも悪くないかな、なんて思ってしまうのだ。
キラキラとした朝日が射す明るいリビングで、二人きりの朝食を幸せに過ごすことが出来た。
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