2 / 219
第1章 1
..
しおりを挟む
「こんにちは、お義母さん」
「こんにちは、美味しいお菓子を持ってきたのよ。ほら、座ってちょうだい」
「…ありがとうございます」
お義母さんは優しい。
結婚してからこうしてちょくちょく家を訪ねてきてお話してくれる。
少し心休まる時間だ。
「…潤也は最近どう?」
「潤也さんは…お仕事頑張っていらっしゃいます、とっても」
「それはそうなんだけれど…透さんとは」
「…あまりお話できなくて」
「まあ…あの子ったら、ごめんなさいね。透さんのせいじゃないのだから気にしないでね」
「いえ…大丈夫です」
「あの子しょっちゅう何かしら贈るでしょう?…あなたのこと気遣ってるつもりなの、嫌ってはないの」
「はい…それは良くして頂いてます」
それ以上、潤也さんの話はしなかった。
明後日のパーティのことや世間話をしてお義母さんは帰って行った。
とても華やかな人だ。自分達と同じ政略結婚にも関わらず、お義父さんとも仲睦まじい。
使ったティーカップを片して仕事に戻り、時間になれば夕食を作る。
お手伝いさんには簡単な掃除と洗濯だけを頼んでいる。それ以上やられてしまうと何もやることがなくなってしまうから。
今日はそれほど遅くならないと聞いているので用意をして待っていると潤也さんが帰ってくる。
「おかえりなさい、お疲れ様です」
「…あ、あぁ。…ただいま」
あからさまに目をそらされてしまう。
「鞄置いてくるから…先食べてろ」
背中越しにそう言われるが、席に着いて彼を待つ。うっとおしいと思われるだろうが、まあいい。
形だけでも一緒に食べたい。
少し後から来た潤也さんが席につき、ぎこちなく食べ始める。
「…お口に合いましたか」
今日はミートローフを作ってみた。
潤也さんはお肉が好きと聞いていたのでそうしてみたのだが気に入ってくれただろうか。
「あぁ…美味い…よ」
なんてぎこちなくてよそよそしいのだろう。
「ありがとうございます」とだけ返してその後も変わりなく静かに夕食を終えた。
夕食の片付けを終え、それぞれ風呂に入り寝室に入ると既に潤也さんがいて本を読んでいた。
こうしてみるととっても格好いい。世間でも有名なイケメン御曹司だ。
それなのに…こんなに僕は嫌われている。
まあその気になれば他の相手なんかたくさんいるか。
「…明日は予定、空いてるか」
唐突にそんなことを聞かれて驚いてしまう。
なんだろう、少し期待してしまう。
「空いてますけど…お出かけですか?」
「あぁ、パーティの用意とか…衣装を。慌ただしくてオーダーメイドとかは出来なかったが…気に入ったのがあれば…」
もごもごと口ごもりながら話す彼に少し笑ってしまう。
ちょっと可愛い。
嫌われているかもしれない、けれどこんなところがあるからやっぱり僕は潤也さんが好きだ。
「分かりました、何時から行きますか」
「…そうだな…10時とか…行けるか」
「はい、分かりました。…おやすみなさい」
「…お休み」
布団を深く被って顔を隠す。
少し、しかも業務連絡のような会話なのにこれだけ会話出来たことが嬉しい。
明日はもっと話せるといいな、そう思って目を閉じた。
「こんにちは、美味しいお菓子を持ってきたのよ。ほら、座ってちょうだい」
「…ありがとうございます」
お義母さんは優しい。
結婚してからこうしてちょくちょく家を訪ねてきてお話してくれる。
少し心休まる時間だ。
「…潤也は最近どう?」
「潤也さんは…お仕事頑張っていらっしゃいます、とっても」
「それはそうなんだけれど…透さんとは」
「…あまりお話できなくて」
「まあ…あの子ったら、ごめんなさいね。透さんのせいじゃないのだから気にしないでね」
「いえ…大丈夫です」
「あの子しょっちゅう何かしら贈るでしょう?…あなたのこと気遣ってるつもりなの、嫌ってはないの」
「はい…それは良くして頂いてます」
それ以上、潤也さんの話はしなかった。
明後日のパーティのことや世間話をしてお義母さんは帰って行った。
とても華やかな人だ。自分達と同じ政略結婚にも関わらず、お義父さんとも仲睦まじい。
使ったティーカップを片して仕事に戻り、時間になれば夕食を作る。
お手伝いさんには簡単な掃除と洗濯だけを頼んでいる。それ以上やられてしまうと何もやることがなくなってしまうから。
今日はそれほど遅くならないと聞いているので用意をして待っていると潤也さんが帰ってくる。
「おかえりなさい、お疲れ様です」
「…あ、あぁ。…ただいま」
あからさまに目をそらされてしまう。
「鞄置いてくるから…先食べてろ」
背中越しにそう言われるが、席に着いて彼を待つ。うっとおしいと思われるだろうが、まあいい。
形だけでも一緒に食べたい。
少し後から来た潤也さんが席につき、ぎこちなく食べ始める。
「…お口に合いましたか」
今日はミートローフを作ってみた。
潤也さんはお肉が好きと聞いていたのでそうしてみたのだが気に入ってくれただろうか。
「あぁ…美味い…よ」
なんてぎこちなくてよそよそしいのだろう。
「ありがとうございます」とだけ返してその後も変わりなく静かに夕食を終えた。
夕食の片付けを終え、それぞれ風呂に入り寝室に入ると既に潤也さんがいて本を読んでいた。
こうしてみるととっても格好いい。世間でも有名なイケメン御曹司だ。
それなのに…こんなに僕は嫌われている。
まあその気になれば他の相手なんかたくさんいるか。
「…明日は予定、空いてるか」
唐突にそんなことを聞かれて驚いてしまう。
なんだろう、少し期待してしまう。
「空いてますけど…お出かけですか?」
「あぁ、パーティの用意とか…衣装を。慌ただしくてオーダーメイドとかは出来なかったが…気に入ったのがあれば…」
もごもごと口ごもりながら話す彼に少し笑ってしまう。
ちょっと可愛い。
嫌われているかもしれない、けれどこんなところがあるからやっぱり僕は潤也さんが好きだ。
「分かりました、何時から行きますか」
「…そうだな…10時とか…行けるか」
「はい、分かりました。…おやすみなさい」
「…お休み」
布団を深く被って顔を隠す。
少し、しかも業務連絡のような会話なのにこれだけ会話出来たことが嬉しい。
明日はもっと話せるといいな、そう思って目を閉じた。
29
お気に入りに追加
1,504
あなたにおすすめの小説
運命とは強く儚くて
楽
BL
陰者…
男女問わず、妊娠することができる。非常に希少な人種。数ヶ月に一度の発情期があり、非力なことが多いため社会的地位が低い。
陽者…
男女問わず、陰者を妊娠させることが出来る。陰者の次に希少で、生まれ持って非常に優秀な人材が多い。王族の家系等は陽者が多い。
ルドア王国の王宮で下人をしていた陰者のエディは、戦でリワーフ帝国の捕虜になってしまう。
牢獄で過ごしていると、突然皇帝の元へ出されてしまう。
陰者ということがバレたか、はたまた何かの疑いが掛けられたのかと思いきや…
突然の客人扱いや、皇帝の私物発言。
姉の忘れ形見である姉の息子であるデニスを守るため、陰者ということを隠して従うことになったのだが、既に陰者ということがバレていた。
怯えるエディに皇帝は全て知っていたと話し、エディを自分のものにしたいと話す。
陽者である皇帝の近くで働くのは心配があったエディだが、傍務めをしていくうちに皇帝とも打ち解け、彼の愛情に絆されてデニスと3人で過ごす生活を幸せだと思っていたが…
こじらせΩのふつうの婚活
深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。
彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。
しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。
裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
もう一度、誰かを愛せたら
ミヒロ
BL
樹(Ω)涼太(Ω)豊(α)は友人であり、幼馴染みだった。樹は中学時代、豊に恋している事を涼太に打ち明け、応援されていた。
が、高校の受験前、涼太の自宅を訪れた樹は2人の性行為に鉢合わせしてしまう。信頼していた友人の裏切り、失恋による傷はなかなか癒えてはくれず...。
そして中学を卒業した3人はまた新たな出会いや恋をする。
叶わなかった初恋よりもずっと情熱的に、そして甘く切ない恋をする。
※表紙イラスト→ as-AIart- 様 (素敵なイラストありがとうございます!)
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)
Oj
BL
オメガバースBLです。
受けが妊娠しますので、ご注意下さい。
コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。
ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。
アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。
ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。
菊島 華 (きくしま はな) 受
両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。
森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄
森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。
森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟
森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。
健司と裕司は二卵性の双子です。
オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。
男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。
アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。
その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。
この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。
また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。
独自解釈している設定があります。
第二部にて息子達とその恋人達です。
長男 咲也 (さくや)
次男 伊吹 (いぶき)
三男 開斗 (かいと)
咲也の恋人 朝陽 (あさひ)
伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう)
開斗の恋人 アイ・ミイ
本編完結しています。
今後は短編を更新する予定です。
好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)
カム
BL
「異世界で働きませんか?」
偽営業マンみたいな男、如月隼人にスカウトされたので、再び異世界トリップすることにした修平。
運が良ければまたルーシェン王子と会えるかも、そんな期待を抱いて王宮にやってきたけれど…。
1week本編終了後の番外編です。
一番続編希望の多かった王子様とのその後の話なので、他の攻めキャラは登場しません。
王子様×主人公
単独で読めるように簡単なあらすじと登場人物をつけていますが、本編を読まないと分かりにくい部分があるかもしれません。
本編のネタバレあり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる