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第1章 1
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「こんにちは、お義母さん」
「こんにちは、美味しいお菓子を持ってきたのよ。ほら、座ってちょうだい」
「…ありがとうございます」
お義母さんは優しい。
結婚してからこうしてちょくちょく家を訪ねてきてお話してくれる。
少し心休まる時間だ。
「…潤也は最近どう?」
「潤也さんは…お仕事頑張っていらっしゃいます、とっても」
「それはそうなんだけれど…透さんとは」
「…あまりお話できなくて」
「まあ…あの子ったら、ごめんなさいね。透さんのせいじゃないのだから気にしないでね」
「いえ…大丈夫です」
「あの子しょっちゅう何かしら贈るでしょう?…あなたのこと気遣ってるつもりなの、嫌ってはないの」
「はい…それは良くして頂いてます」
それ以上、潤也さんの話はしなかった。
明後日のパーティのことや世間話をしてお義母さんは帰って行った。
とても華やかな人だ。自分達と同じ政略結婚にも関わらず、お義父さんとも仲睦まじい。
使ったティーカップを片して仕事に戻り、時間になれば夕食を作る。
お手伝いさんには簡単な掃除と洗濯だけを頼んでいる。それ以上やられてしまうと何もやることがなくなってしまうから。
今日はそれほど遅くならないと聞いているので用意をして待っていると潤也さんが帰ってくる。
「おかえりなさい、お疲れ様です」
「…あ、あぁ。…ただいま」
あからさまに目をそらされてしまう。
「鞄置いてくるから…先食べてろ」
背中越しにそう言われるが、席に着いて彼を待つ。うっとおしいと思われるだろうが、まあいい。
形だけでも一緒に食べたい。
少し後から来た潤也さんが席につき、ぎこちなく食べ始める。
「…お口に合いましたか」
今日はミートローフを作ってみた。
潤也さんはお肉が好きと聞いていたのでそうしてみたのだが気に入ってくれただろうか。
「あぁ…美味い…よ」
なんてぎこちなくてよそよそしいのだろう。
「ありがとうございます」とだけ返してその後も変わりなく静かに夕食を終えた。
夕食の片付けを終え、それぞれ風呂に入り寝室に入ると既に潤也さんがいて本を読んでいた。
こうしてみるととっても格好いい。世間でも有名なイケメン御曹司だ。
それなのに…こんなに僕は嫌われている。
まあその気になれば他の相手なんかたくさんいるか。
「…明日は予定、空いてるか」
唐突にそんなことを聞かれて驚いてしまう。
なんだろう、少し期待してしまう。
「空いてますけど…お出かけですか?」
「あぁ、パーティの用意とか…衣装を。慌ただしくてオーダーメイドとかは出来なかったが…気に入ったのがあれば…」
もごもごと口ごもりながら話す彼に少し笑ってしまう。
ちょっと可愛い。
嫌われているかもしれない、けれどこんなところがあるからやっぱり僕は潤也さんが好きだ。
「分かりました、何時から行きますか」
「…そうだな…10時とか…行けるか」
「はい、分かりました。…おやすみなさい」
「…お休み」
布団を深く被って顔を隠す。
少し、しかも業務連絡のような会話なのにこれだけ会話出来たことが嬉しい。
明日はもっと話せるといいな、そう思って目を閉じた。
「こんにちは、美味しいお菓子を持ってきたのよ。ほら、座ってちょうだい」
「…ありがとうございます」
お義母さんは優しい。
結婚してからこうしてちょくちょく家を訪ねてきてお話してくれる。
少し心休まる時間だ。
「…潤也は最近どう?」
「潤也さんは…お仕事頑張っていらっしゃいます、とっても」
「それはそうなんだけれど…透さんとは」
「…あまりお話できなくて」
「まあ…あの子ったら、ごめんなさいね。透さんのせいじゃないのだから気にしないでね」
「いえ…大丈夫です」
「あの子しょっちゅう何かしら贈るでしょう?…あなたのこと気遣ってるつもりなの、嫌ってはないの」
「はい…それは良くして頂いてます」
それ以上、潤也さんの話はしなかった。
明後日のパーティのことや世間話をしてお義母さんは帰って行った。
とても華やかな人だ。自分達と同じ政略結婚にも関わらず、お義父さんとも仲睦まじい。
使ったティーカップを片して仕事に戻り、時間になれば夕食を作る。
お手伝いさんには簡単な掃除と洗濯だけを頼んでいる。それ以上やられてしまうと何もやることがなくなってしまうから。
今日はそれほど遅くならないと聞いているので用意をして待っていると潤也さんが帰ってくる。
「おかえりなさい、お疲れ様です」
「…あ、あぁ。…ただいま」
あからさまに目をそらされてしまう。
「鞄置いてくるから…先食べてろ」
背中越しにそう言われるが、席に着いて彼を待つ。うっとおしいと思われるだろうが、まあいい。
形だけでも一緒に食べたい。
少し後から来た潤也さんが席につき、ぎこちなく食べ始める。
「…お口に合いましたか」
今日はミートローフを作ってみた。
潤也さんはお肉が好きと聞いていたのでそうしてみたのだが気に入ってくれただろうか。
「あぁ…美味い…よ」
なんてぎこちなくてよそよそしいのだろう。
「ありがとうございます」とだけ返してその後も変わりなく静かに夕食を終えた。
夕食の片付けを終え、それぞれ風呂に入り寝室に入ると既に潤也さんがいて本を読んでいた。
こうしてみるととっても格好いい。世間でも有名なイケメン御曹司だ。
それなのに…こんなに僕は嫌われている。
まあその気になれば他の相手なんかたくさんいるか。
「…明日は予定、空いてるか」
唐突にそんなことを聞かれて驚いてしまう。
なんだろう、少し期待してしまう。
「空いてますけど…お出かけですか?」
「あぁ、パーティの用意とか…衣装を。慌ただしくてオーダーメイドとかは出来なかったが…気に入ったのがあれば…」
もごもごと口ごもりながら話す彼に少し笑ってしまう。
ちょっと可愛い。
嫌われているかもしれない、けれどこんなところがあるからやっぱり僕は潤也さんが好きだ。
「分かりました、何時から行きますか」
「…そうだな…10時とか…行けるか」
「はい、分かりました。…おやすみなさい」
「…お休み」
布団を深く被って顔を隠す。
少し、しかも業務連絡のような会話なのにこれだけ会話出来たことが嬉しい。
明日はもっと話せるといいな、そう思って目を閉じた。
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