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Ⅲ- 3
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しおりを挟むその夜、手配していた土地の領主の城で体を休めることにした。
領主は拝む勢いで歓迎してくれて、食事を共に取りながら日々の生活や困っていることなどを聞いた。
泊まらせてもらうんだ、これくらいしよう。
寝支度をすませ、皇帝への手紙を書き終わると部屋で護衛をしていたヒースが立ち上がる。
「では、俺は外にいますので」
「うん。…もう少しここにいてくれない?、話し相手に」
ダメかな、とヒースを引き止めると仕方なさげに頷き腰を下ろした。
「ヒースはもう18か」
「今更ですね。…もうクソガキの俺じゃないですよ」
くく、と笑うヒースの表情は生意気だった頃とあまり変わっていない。
「そうだね。…なんか恋人とか、友達とか居ないの?」
「さあ…特にはいないですね。」
「マルクは?」
「あれは…まあ、でも、休日もよく一緒にいますし部屋も一緒なんで」
「仲良しだね」
「あいつには手加減しなくていいんで楽ですね。…変に気ぃ張らなくていい」
何かを思い浮かべながら優しく微笑むヒース。
なんだ、なんかいい感じでは無いか。
自分がとやかく口を出すことでは無いがやはり楽しくなってしまう。
「…男の子供ってどれくらいで背が伸びるのかな」
「エディ様は自分のことは覚えてないんですか」
「僕は隠者だし、もしかしたら成長の速さとか違うのかなって思って。…僕はいろいろ遅かったよ、育ちのあれもあるけど」
「この際なんで聞いてみますけど、エディ様は皇后になる前はどこにいたんですか?」
「別の国。別の国の王宮で下働きをしてたんだ。それで、この国と戦争になって、デニスと捕虜になった…みたいな感じ」
「シンデレラストーリーですね」とだよねと苦々しくヒースが笑う。
気を使わせてしまったのだろうか。
「…ある意味、エディ様は平民から見たら憧れなんですよ。いつか自分も、もしかしたらって希望を持たすことができるんです。そういうのが、俺は大事だと思いますね」
「ヒースの憧れはテオ?」
「憧れっつうか…師匠みたいな」
「なるほど。テオね、ヒースのこと自分の子みたいに大切にしてるから喜ぶと思うよ」
ヒースが帝都に来ることになってからずっと気にかけているからなぁ、と数年前のことを思い出す。
ジュダもヒースのことを目標に、兄のように思っているだろう。テオもカレルさんも冷たくて仕事人のうな感じだけれど、愛情深いのだ。
ただ、第1に犠牲にするものを自分達に設定してしまうのは困りものだが。
「ほら、そろそろ寝てくれないと。…皇帝陛下にどやされるんで」
頼みますよ、と立ち上がったヒースに従いベッドへと入る。
陛下に会いたい。
今更ながらとても恋しくなってしまった夜だった。
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