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Ⅲ- 3
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しおりを挟む「では、行ってきます」
「気をつけて。…手紙…」
「毎日書きますよ。すぐ帰りますから、そんな顔しないで」
出立当日、馬車に乗り込む前に明らかに凹んでいる皇帝を慰める。
「ルカ、お父様をお願いね。マルクがいなくてもいい子に」
「お父様とカレルといるよ」
「いい子。また帰ったらお話聞かせて」
最後にルカを抱きしめ頬擦りし、また皇帝を抱きしめる。
結局、最後の最後まで彼はなかなか離してくれなかった。キスをしてやっと馬車に乗り込むと中で同伴してくれるマルクが「やれやれ」というように肩を竦めていた。
マルクは護衛服とは違い、ゆったりとした、従者に見える服装をしている。
マルク、テオ、ヒースは従者兼護衛として。他にも兵士が10数名いるが、あくまで荷物などの番を主にしている。
土産の品々がいろいろあるし、そこの番をしてもらった方が有難い。
見えなくなるまでルカと皇帝に手を振り続けた。
「しばらく暇ですね」
「そうだね。寂しいな」
「エディ様は皇帝陛下のどこがお好きなんですか?」
ニマニマと首を傾げるマルクに「もう」と苦笑しながらも首を捻る。
「全部…?」
「素敵!…でももっと具体的にお聞かせくださいな」
「楽しそうだね」
「人の恋の話ってオレ、好きなんです」
全く。
巫山戯てわざとらしく乙女チックなポーズを取ってくるマアクの額を軽くデコピンする。
「…陛下の綺麗な長い髪とか、顔が好きだな。あとは…普段、公務とかでキリッとした所を見た後に自分に甘えて来るところとか…デニスやルカに振り回されて泥だらけになっているとことか」
「幸せですね」
「うん。…もうここに来て8?10?年弱経つけれど幸せなことばかりだよ」
しみじみと今までをぼんやり思い出して笑う。
「もうお子は作られないんですか」
「どうだろう…お産が結構しんどくて、危なかったから皇帝も無理に産んで欲しくない、とは言ってたけど。…跡継ぎには2人いるし、2人が嫌なら誰か立てるからいいんだよ」
「陛下は本当にエディ様を愛しておられますよね…羨ましいです」
「マルクはいい人いないの?」
「残念ながら。ま、でも恋仲っていうのはいいものだと思います。友でも、家族でもないものを得られますから」
「ずっと気になってたんだけど、ヒースとは何ともないの?」
かなり気になっていたことを尋ねると一瞬、マルクがちらりと外を見る。
かなり前、ヒースにも聞いたが腐れ縁とだけ言われた。しかし2人の距離は友よりは近いし、とんでもなくお互いを信頼している。
「ヒースはオレの始めての友達ですよ。…あいつも性格悪いから友達いなかっただろうし、お互い距離が近いので」
「このオレが仕掛けてもとくに反応無いんで、何も無いですよ」とマルクは笑った
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