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愛なのか友情なのか
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しおりを挟む「やめ!そこまで!」
ビリビリと震えるような教官の声で我に返り、拳を止める。
同じくこちらに向けていた動きを止めているマルクが目に入りお互い体勢を戻した。
我を失うほどなんて、いつ以来だ。
「…やるな」
「君もね」
ジンジンと響く手首の金輪を外し、異常がないか確かめる。
こいつに正々堂々真っ直ぐ勝負は向いていない。攻撃は受けるだけ、とのことで金輪でナイフやらなんやらを受けていたが、彼の体躯に比例しない力が加わるのさものだから心底驚いた。
周りも呆然とする中休み時間となり、シャワーでも浴びるかと1人歩いていると後ろから飛びつかれる。気配を感じなかった。
正体は案の定、マルク。
「…ンだよ」
「オレ、君のこと気に入っちゃった。仲良くしてね」
「は?…ッチ、勝手にしろ」
「やった~。んじゃ、シャワールームへゴー」
降りろ、と行っても聞かないことを悟るとそのままにシャワールームへ歩いていった。
マルクは俺の態度に懲りずに何度も話しかけたり絡んできた。
最初は鬱陶しいと感じたが、唯一心置きなく戦える相手でもあるのでなんとなく話すようになっていった。
「…お前は、重心の使い方が良い。俺の先生にも見て欲しい」
「先生って週末君が教えてもらってる精鋭隊の人?」
「あぁ。俺はあの人以上にすげぇ人、見たことねぇ」
「へぇ。それはオレもお目にかかりたいね」
「お前は誰に学んだ」
「うーん…ま、自然に身についたって感じ?旅芸人だからさ、いろいろやるのよな」
「あとは才能??」と茶化す奴を馬鹿、と軽く叩いた。
ぱち、と目を開けて暗がりの中横を見るとマルクが反対側を向いて寝ていた。
「…お前の出生とか詳しいこと知らねぇんだよな」
なんとなく呟くと
「…知りたい?」
と返ってきた。
起きていたのか。
「…オレはね…ずっとずっと北の国出身の旅芸人の一座…て言っても、俺はその北の国に行ったことは無い。…芸人って言っても、道で何かしらやるだけでは稼ぎも少ないからね、裏稼業ってのがあるんだ。…芸事の身軽さを活かして暗殺、諜報、情報屋…医者…いろんなことが得意な奴らが集まってる。ありがたいことにオレは美人で、体の使い方が上手かったんだ」
「それで今に至る」といった彼に「なんでここにお前だけ留まってる」と単純な疑問を投げかけると「難しいね」と返ってくる。
「ここに残ることはオレの望みだった。…人前で何かしたり目立つのも好きだよ、けど成長するにつれてなんとなく、おかしい、とオレを不気味がる人も出てきてさ…なんとなく、他の道も試したくなっただけ」
「旅してしたお前にとって…ここは窮屈じゃないか」
「まあ…たまにはね。けど自由で恵まれてる方だと思う。不安定じゃないし、腹いっぱいになれるし凍えないし…こうして友達もいる」
「誰がお前ほ友達だ」
「君とは言ってないよ」
くすくすと揶揄われ、クソ、と悪態をつくと寝返りをうってマルクがこちらを向く。
「オレはね、今が最高に楽しいんだよ。ルカ様にも君にも出会えたからね」
「ふん…そりゃどうも」
くすぐったいような気持ちで「はよ寝ろ」と布団に潜り込んだ。
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