運命とは強く儚くて

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愛なのか友情なのか

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「荷物、少ないね」

「そうか?…お前こそ、いろいろこだわってる割には少ねぇな」

「旅には慣れてるから荷造りが上手いんだよ」

明後日の出立のために荷造りをしながらマルクと駄弁る。

艶の良いシルバーブロンドに爪やら顔やらに気を使っているらしい奴にしては、思っていたより荷物が少ないので少し驚く。

「基本、動く時は手ぶらだよ」

「お前はいっつもだろ」

「まぁね」

こいつは服や体の至る所に武器や物を忍ばせている。というのも、パッと見武器に見えないものが多いと言った方が正しいか。

「お前のいい関係になる奴ぁ大変だな、ハグのひとつで命取りだ」

っはは、と笑いながらベッドへ体を沈めると上からマルクがにゅ、と覗き込む。

「いい関係?って何」

ニヤニヤと笑うマルクの鼻をつまみ、顔を軽く退ける。

「言わねぇとわかんねぇくらい箱入りか?てめぇは」

「うっそー。…ま、そんな簡単に死なないやつを探すよ」

「例えば?」

「うーん、君とか?刺しても切っても簡単には死ななそうだし」

ふふ、と笑うやつの真意は分からない。
どうせふざけているんだろう。

「失礼なやつだな。さすがに俺も切られちゃぁ死ぬぜ」

「そりゃ意外だね。…で、君はいいひと、いないのかい?」

ぼふん、と無理やりベッドに入り込んできては頬杖をついてまたもやニヤニヤし始めるマルク。
なんなんだこいつは。

「あぁ?…いねぇよ、作る気すらねぇ」

「へぇ、若い女中達はお前を気に入ってそうだけどね」

「女なんか面倒だろ。少しでも雑に扱ってみろ、ぎゃあぎゃあ喚く」

「こんなガサツな男選ぶなんて見る目がないと思うけどね」

なんだこいつ。

「うるせぇな。ンなに言うならお前はどうなんだよ」

「この前は厨房の子にお菓子を貰ったね。あとは…洗濯係のこと、掃除の子かな」

他にも聞くかい?と不敵な笑みを浮かべるマルク。

「お前は嘘くせぇ、見抜けねぇとは女共も趣味が悪ぃな」

「負け惜しみ?」

「勝負してねぇ」

「へぇ。…ま、関係は誰とも持ってないよ」

「関係?」

「体の。セックス」

何事もないようにハッキリ言ってのけたあいつに思わず噴き出す。
別にそういう話が苦手とかが苦手な訳じゃない。ただ、こんなにハッキリとこの流れで言うのか。

「あれれ、リース、経験なかった?」

「…あるよ」

「だァれ?」

「…酒場の、女。酔っ払って連れ込まれちまった」

「へぇ、良かった??」

ニヤニヤと楽しそうだ。

「お前はどうなんだ?え?」

「ん~、もっちろんあるよ。女も、ね」

囁くように言ってのけ、ケラケラ‪笑うマルク。

こいつとは長い付き合いにはなるが…やはり分からない。

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