運命とは強く儚くて

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Ⅲ -2

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「デニス、忘れ物ない?」

「お母様、もう何回目」

「ごめんごめん。…ほんと、また会う時はもっと大きくなってるんだろうなぁって」

「お父様より背高くなりたいんだ」

「ほう?それは楽しみだな」

3日後の新学期の為、今日はジュダとデニスが学校へ戻る。
もう少し一緒にいられたらいいのに、なんて思うがせっせと自分で荷造りをするデニスを見て誇らしくも思う。

帝国の皇子が、なんて言われることもあるが、自分のことは自分でできるように育てたことに悔いは無い。

皇帝とデニスを見守り、3人で広間に降りていく。

「じゃあ、また手紙書いてね」

「うん!」

「元気にしていろよ?」

「はぁい」

「じゃあね!」と馬車に走っていったデニスの少し後にやっとカレルさんから開放されたであろうジュダがテオと共に大きな鞄を抱えて走ってきた。

さすがは2人とも、カレルさんは数十秒後に息を切らしながらやってきた。


使用人たちも出てくる程大きな騒ぎになった2人の見送りを済ませると「おかあさま!」とルカが抱きついてくる。
どこに行っていたのやら、ふわふわとした髪に木の葉がついている。

「ルカ、どこでお見送りしたの?」

「あそこ!きのうえ!」

「よく見えた?」

「うん!」

頭から木の葉を取るついでにルカを抱きしめて頭をわしゃわしゃ撫でる。
この子も来年は試験を受けて、もし受かったら城からいなくなってしまうのか。

もしそうなれば寂しいな…なんて。





実は、寂しいなんて言ってはいられない。
1週間後、僕は1人で外交に行かなければならないからだ。しかも相手は大国スメリカ。
ルカが生まれた頃からピリピリしている状態が続いている国だ。

その王妃との会談、ということで行くのだが…。非常に緊張している。
暗殺されやしないか、とかもあるが何より上手くやれるか心配で仕方ない。
皇帝の后になって7.8年も経つがやはり下民時代の方が圧倒的に長いからかきちんとした王族のしきたりなどは未だに緊張する。

皇帝は初め、訪問を反対していたが皇帝自身が行くわけにもいかず、ピリピリしている相手に断りを入れることはしたくはない。

テオとヒース、マルクをお供に行くことで皇帝は納得した。
優秀な3人をまとめて連れていくのも気が引けるが、護衛を何人も連れていると良い印象が得られないだろうから精鋭の3人を。

ルカにはマルクのいない間、いい子にしているよう言い聞かせなくては。



聞く所、スメリカの王妃は謎が多いらしい。
歳は自分より3つ上で、男性か女性か分からないらしい。

…怖。

そんな情報がはっきりしない人のところは1人で行くのか。心細い。

今のうちに癒しを堪能しなければ。

「くすぐったいよー」ともがくルカをくすぐり抱きしめながら不安を無理やり拭った。

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