運命とは強く儚くて

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テオとカレル

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「何頭か良い子馬を用意して頂いたみたいですので、気に入ったものがあれば教えてください」

「うん!」

「ジュダ、行こう」と2人で仲良く馬舎を見て回る2人を見守る。

「相変わらず良い馬たちだ」

「ありがとうございます。…毎度、お世話になっております」

舎主である、背筋のしゃんとした老男に声をかける。若い時に乗っていた黒馬はここで買ったし、今でも歳のせいで任務には連れて行けないが散歩がてら走らせたりもする。
現在、任務に使っている子も同じ血筋の子で利口な駿馬だ。
同じくここで買っている。



「気に入った子はいた?」

「…あの子」

「グレー?の子?」

落ち着いた雰囲気の、青みがかったグレーの毛色の子馬だ。
他の子馬達が楽しそうにじゃれたりうろうろする中、あの子だけは落ち着いている。

「触ってみる?」

「うん」

許可はもらっているので柵からグレーの子を引いてジュダに引き合わせてやる。

最初はお互いに警戒していたようだが直ぐに慣れたのか撫でたりと無言ではあったが楽しそうだった。

「しばらくその子といる?」

「うん」

「俺はデニス様のとこ行ってるから、何かあれば近くの人に言うんだよ?」

分かった、と子馬を撫でながら頷くジュダから離れデニス様の様子を見に行く。
デニス様も気に入った栗毛の子馬と触れ合っていた。

2人とも決まったようなので舎主に伝え、後日引取りに来ると伝える。
それまでにきっちり子馬の世話の仕方を教えなくては。
デニス様の子馬は…ジュダがすべきかと思っていたが「僕がするけど?」と不思議そうに首を傾げていたのでジュダと学校の休暇中はすることにした。

「名前を決めないとだよ、ジュダ」

「デニス様は、何にするんですか」

「うーん…」

帰りの馬車の中で楽しそうに子馬の名前を決める2人を見守りつつ、ジュダの明日からの鍛錬の内容を考える。
この時期に筋肉をつけすぎると成長に影響を与えるが、早いうちから技術を学ぶものも大切だ。

ジュダは骨格からして筋骨隆々の長身、という訳にはならないだろう。
その分技術でカバーすれば問題はない。

マルクとの対戦訓練が良いだろうか、お願いしてみるか…とぼんやり考えているとそっと肩を叩かれる。

で様は疲れて眠ってしまったらしい。
ジュダが隣に腰掛けてきた。

「…もっと…強くなりたい」

「強くしてあげるよ。…ジュダは強くなれる」

嬉しそうなジュダの肩を抱き、付け足す。

「でもね、思うように戦えなくても、ジュダがもう戦いたくないっていうなら俺もカレルもそれを尊重するから。…どんなジュダでもそれは変わらないからね」

「?…うん」

不思議そうなジュダの額に軽く唇を押し当てる。まだまだ小さいんだから甘えていいのに。

「カレルにもっと甘えてやって?…仕事で疲れて癒しが欲しいんだって」

「…癒し」

「そ。…抱きついて父上だいすきとかやったら喜ぶよ」

なんて冗談のつもりで言ってみたのだが…まさか本当にやるなんて俺は思いもしなかった。

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