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愛なのか友情なのか
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しおりを挟む「おはよ」
「っげ」
「げ、って何だよ。失礼なやつ」
早朝、鍛錬に行こうと部屋を抜け出すとマルクに脅かされる。
既にベッドから抜けてどこか行ったのかと思ったが…そうでもないらしい。
「おい、遅れるから急げ」
「ほいほい」
同じ棟に寝泊まりしている他の上級使用人を起こさないように静かに走りながら鍛錬場へ向かう。
まだ開始時間には早いにも関わらず、テオさんと他の隊士が数名居た。
「おはようございます!」
「おはよう。…と、マルクもおはよう」
「おはようございまーす!」
華麗にお辞儀をしては元気に挨拶をするマルクにテオさんが笑う。
「カレルや学校の講師から話は聞いてるよ。…体を温めたらおいで、得意なことを見せて欲しい」
「了解です」
テオさんは相変わらず強い。
むしろ、俺が初めてあった時より強くなっている。本人曰く、現場に復帰したからと言っていたが…流石だ。
テオさんは、クソガキだった俺を認めて指導してくれた尊敬する人だ。
「テオさん、って強いんでしょ?…楽しみだなぁ」
「お前、簡単に勝てるとか思ってねぇだろうな」
「思ってないよ。オレとは少し違う、君やジュダ坊と似たような感じだよね」
「まぁな」
何ていると言われて少し嬉しく思いながらも体を伸ばし始めたマルクの隣で自分も軽く体を動かす。
「オレ走るの嫌いだな~」
「うるせぇ、お前毎回そればっかだな」
皆が来る前にさっさと走り終えようと2人で並んで走っているとやはりマルクが愚痴を零す。
こいつは走るのが嫌いらしい。
学校の鍛錬では走り込みは日常的にあったので体力はあるが永遠に嫌いなままらしい。
確かに俺もただ走るのは好きじゃない。
「「障害物競走」」
「だったら楽しいのになぁ」「いいのによ」
つい2人口調が揃ってしまう。
ケラケラ笑うマルクを小突き「真似すんな」と言ってやる。
走り終わるとさすがに暑くて上の服を脱いだ。それを見たマルクも脱いだのは良いが…
日に焼けにくいらしい肌は白く、均等についた筋肉が顕になった。
俺は慣れているからいいが…他の隊士達には良くないんじゃないか。
そう考えていると「なぁに見てんの」とマルクが顔を覗き込んでくる。
「なんもねぇって。…お前、何か着とけよ」
「なんでさ」
ニヤニヤしながらわざとらしく首を傾げるマルクの首を絞めたくもなるが…。
こいつ、絶対わかってやがる。なんて言えば良いのか葛藤していると「分かってる分かってる」と上着を着直して袖をまくっていた。
こいつは読めなくて疲れる。
「行くぞ、テオさんが待ってる」
「りょ~」
軽々とした足取りで何事も無かったかのように着いてくるマルクを見て俺はため息をついた
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