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愛なのか友情なのか
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しおりを挟む「まさかお前と一緒の部屋とはな」
「不満?」
ドサ、とベッドの傍らに大きな荷物を置いてベッドへ飛び乗るマルクを見て頬杖を着く。
今までは学校の寮にいたし、週末、テオさんの訓練を受けるために宮廷に戻った時もこの部屋で1人だったから、これからもそうだと思ったのだが…もう1つのベッドにマルクが入ってきた。
マルクは武術部に途中入学してきたやつで、隣国にはいない人種だ。
国々を芸をしながら回る一族の1人だったらしい。
どういう経緯があって一族から抜けて学校へ入学したかは分からないが、奴はとんでもない変わり者だった。
俺も入学したての頃は口も素行も悪く、クソガキだったも思う。
けれどあいつは常軌を逸していて、本でもペンでもなんでもジャグリングし出すは堂々と屋根に昇ってはそのうえで目立つようなことをするわ…
なんでそんな派手なことばかりするのかと聞くと「人生は舞台そのものだからさ」と訳の分からないことを言ってきた。
そんなちゃらんぽらんな奴ではあるが、身のこなし方、暗殺術は俺といい勝負。偵察能力や潜入など、細かい暗殺芸は俺をも超える。
しっかりとした剣術、というより自己流の、独特な体の使い方で、踊るような身のこなしだと思う。
なのでやりにくいことこの上ない。強いやつと戦うのは好きだが、マルクとだけはあまり戦いたくない。
だから直ぐに消えてしまい、退屈を嫌うルカ皇子の付き人になったと聞いた時はピッタリと思った。
「お前、ルカ皇子とは上手くやれてんのか」
「もちろん。仲良くなれたよ。…からくりが発達している国の話を気に入ってくれたみたいでね」
「あの方は知識に貪欲だ」と笑うマルク。
雪の精を思わせる、この帝国では稀なその容姿は黙っていれば悪くないのに。
なんて思いながらマルクを観察しているとそれを察したのかポーズを取ってきた。
「オレに見惚れた?」
「見惚れてねぇよ。…ま、黙ってりゃ見てくれは悪くねえなって」
「失礼だなぁキミは。でも黙ってたらもうそれオレじゃないでしょ」
「それはそうだな」
なんでお前じゃなきゃいけない前提なのかはよく分からないが。
「ねえ、デニス様ってどんな子?」
「はぁ?…そうだな…言うならチェスとかが上手い。ラマールお墨付きの戦略の才がある。」
「へぇ…ルカ様とは少し違うんだね」
「そうだな。あの一家は頭がいいらしい」
「エディ様は優しい人だったね、オレあの人好きだな」
「狙うなよ」
「そういう意味じゃないって」
確かに、若くして帝国を治め、堂々とした態度で王座に君臨する皇帝は恐れられているが、その皇帝が頭の上がらない男があの優しそうなエディ様と思うと面白い。
「兎も角、今日から同室だね。…よろしく」
ずい、と顔を近づけて笑うマルクの淡い青の仁美を見ながら「全く、騒がしそうだ」と返した。
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