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Ⅳ -1
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しおりを挟む「お父様、お母様、ただいま帰りました」
礼儀正しく部屋にジュダと2人、礼をしては挨拶をするデニスにエディが優しく腕を広げると飛び込んだデニス。
「ジュダ、カレルとテオから聞いたぞ。武術部トップだったらしいな」
「…はい。母上に、ほめてもらいました」
「良かったな。俺達からも何か日々の感謝を込めて何か与えなければな…何か欲しいものはあるか」
「い、え…そんな…俺の使命、ですからお気になさらず」
「お父様、ジュダ、この前自分の馬が欲しいって」
「そうか。…では馬をやろう、テオと揃いの黒馬にするか?」
「でも」と最初は慌てたジュダだが「ありがとうございます」と素直に頭を下げた。
するとすぐに
「…できれば子馬が嬉しいです。幼い頃から育てた方がいいと…」
控えめではあるが、言う時は要望を言える所はカレルとテオの子だと思う。
「分かった。駿馬の利口そうな子馬を用意しよう」
「よかったね、ジュダ」
「はい…!」
ジュダの手を取りブンブンと振るデニスを微笑ましく見守っていると「ルカは?」と聞かれたので部屋にいることを伝えるとそちらへ走っていってしまった。
「デニスも学問部で上位の成績らしいな」
「そうですね。…頑張っているようで嬉しいです。チェスやゲームでは敵無しとも聞いてますけれど…誇らしいですね」
心から嬉しそうなエディの頭を撫でる。
エディは最初、優秀な子らが集まる場にデニスが行くのを心配していた。
デニスは幼い頃から優秀ではあったが、元は平民の子として生まれた。エディも平民出身だったからこそ、1番心配していたのではと思う。
「ルカのことも僕は心配です」
「ルカ?…確かにあの子は興味のある無いの差が激しいからな」
「他を疎かにはしないので良いのですが、何せ自由なので…孤立しないか心配で。新しい護衛の子と上手くやれるかなと」
「そうだな…まあ、気にする器でもないだろう?…そんなに心配そうな顔をするな、お前は笑っていた方が良い」
エディの顔をむにむにと弄び、額を擦り付ける。
ルカにもジュダのような目付け役をつけようかと思ったことはある。
同い年の子を数人あてがってはみたのだが、ルカの自由っぷりについていけないようで困っていた。
今は宮廷内にいるのでいいものの、来年から学校に入るのであればそうはいかないだろうし、今年の武術部の卒業生から暗躍に特化した者の中から募ったところ、数人が希望し1人を採用した。
雇用はカレルに任せていたので、今日が対面と聞いていたのだが、遅れているのだろうか。
そんなことを考えつつエディとお茶をしていると断りを入れて1人のスラリとした青年が軽快な足取りで入ってくる。
シルバーブロンドの髪と青みがかった青の瞳が特徴的な青年だった。
見たことの無い人種だ。
部屋に入り、今から見世物でも始めるかのようにお辞儀をした青年は顔を上げるところころと表情豊かに口を開いた。
「お初にお目にかかります、皇帝陛下に皇妃陛下。…私、ルカ皇子の護衛を仕りましたマルク・レヴィンと申します」
「…随分華やかなのがきたな」
あっけらかんとしているエディにそっと話しかけると舞台上のような振る舞いをしていたマルクは次の瞬間には雰囲気までもを変えてこちらを見ていた。
「驚かせて申し訳ありません。口調を緩めることをお許しくださいますか?」
「構わない」
「ありがとうございます。…改めまして、オレはマルク・レヴィンといいます。暗躍や潜入を得意としていますが…幼い頃から旅芸人の1人として世を回っておりましたのでルカ様にもご満足頂けるかと」
「なるほど…いくつの頃からこの国へ?」
興味深げに問いかけるエディに「13.4の頃でしゃうか」と答えながらヒラヒラと手のひらを降って見せ、1つ手を叩いて広げてみると旗の連なった紐が左右の指にかけられていた。
「すごい…、」とはしゃぐエディに袖から棒を取り出し一振すると一瞬で華やかな花束に変わる。
花束を受け取り嬉しそうなエディを見てマルクに礼を言う。
「素晴らしいな。…すぐにルカを呼ぼう」
「お褒めいただき光栄です。…いえ、それには及びません。自分で探し出して驚かせてみたいと思っているので」
「なるほど。…では頼む」
「お任せ下さい」とまたもや軽快に部屋を出ていったマルクを見送り終わるとすぐにヒースが入ってくる。
「喧しくありませんでしたか?あいつ」
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