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Ⅲ -2
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しおりを挟む「かったぁ」
「負けちゃったな。やっぱりデニスは強いね」
えへへ、とエディに褒められて嬉しそうに笑うデニスとその傍らでうんうんと熱心に頷くジュダ。
最近、デニスはチェスにハマっているらしくエディにルールを教えては一緒にやろうとせがんでいるらしい。
「でもおとうさまにはかてない」
「お父様は賢いから仕方ないよ。…いつかお父様にも勝てるようになるといいね」
「それは楽しみだな」
後ろからひょいとデニスを抱き上げ、擽るとデニスが身を捩って笑う。
「へいか…このしろでいちばんつよいひと…だれですか」
ジュダがくい、と裾を引いてそう尋ねるのだから少し考えてみる。
「そうだな…カレルには一度も勝てたことがない、あと一歩のところで負けてしまう。あと、アッシアも強いと思うが…まだまだずる賢さが足りないな」
「カレルさんはずる賢いと?」
ふふ、と笑って首を傾げるエディに「もちろん」と笑ってみせジュダには「カレルには内緒に」と付け足しておく。
カレルは本当にチェスが上手い。チェスの他にもボードゲームやカードゲームは格段に強いのだ。
純粋に強いだけでなく、狡猾なのがカレルの良いところでもあり信頼している。
「ジュダ、カレルのとこいこ!」
「はい…!」
チェスのセットを抱えてジュダと共に部屋を飛び出したデニスを見送り、エディの隣へと腰掛け体を倒すと彼の膝に頭を預ける。
「…お疲れですね」
「あぁ、承認の儀の用意でな」
「そうですか。…僕にもお手伝い出来ることはありますか?」
「そうだな…ただひたすらにデニスとルカの安全を気にして警戒して欲しい。内部の者からも外部からも命を狙われる可能性がある」
「もちろんお前も」と額を撫でてくれるエディの手を取り頬擦りする。
「わかりました。…けれど怖いですね、命を狙われているのは」
「そうだな。…けどお前達だけはどんな手を使っても俺が守る」
例え皇帝の身分から落ちて平民になろうとも、彼らを守りたいと思う。
正直、もっと家族との時間も作りたい。
エディともなかなかゆっくりできないしルカとも少ししか会えない。
デニスと十分遊ぶなどここしばらく少し会話をひたりして終わってしまう。
体がもういくつかあれば全てできるのにと無理なことを考えてしまう。
エディがルカを出産してから夜の営みは避けているし、1ヶ月、2ヶ月は避けるよう侍医から言われている。
寂しいが仕方ない。
溜まるものは溜まるし、愛しい相手には欲情してしまうのだから1人で処理をするのは当たり前だがふとエディが恋しくなってしまう。
決まって処理を終えたあとはエディを抱きしめて眠るのだが運が悪いとまた処理に走ることとなる。
あまり若くなくて良かった。
少し若ければもっと大変なことになったかもしれないが…そんな時は彼の寝顔で浄化されるしかない。
「あの、陛下…」
「どうした」
「…僕も体は男ですから…溜まるものは溜まるんですよ」
「…」
それつまり…
挿入ることは出来ないが…ということか。確かにそれは考えつかなかったが…そういうのもいいな、なんてすぐに考えてしまう。
「お前から誘いとは…こんなに嬉しいことは無い」
もう、と照れ隠しか屈んで口付けてくれる彼。唇が離れるとすぐに起き上がり、今度はこちから口付けた。
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