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Ⅲ -2
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しおりを挟む「…ここの警備が薄いな…人を増やせ。厨房に新顔をあまり入れないようにするのと、各場に探りを入れて怪しいものは徹底的に調べろ」
最近の使用人の配置、1ヶ月後に開催を控えているデニスとルカの承認の儀が行われる。
貴族や各国の大使等も訪れる為、油断できない。
元奴隷のエディやデニス、その子供のルカを亡き者にしたいと思う不届き者はこの国にも、他国にもいるだろう。
失うわけにはいかない。
同時に西方での不穏な空気も気になる。
相手も大国、過去には戦いお互い大きな犠牲を出した。戦は避けたい。
関係を緩やかにする為にも招くべきだろう。
「生まれたばかりの赤ん坊というのは初めて見たが…あんなにも毎日成長するものなのか」
「そうですとも。目を離せばあっという間に大きくなってしまいますからな」
マイペースに語る老人はベルナールという。先代、自分の父の友であり忠臣だった者だ。
今では隠居として田舎でゆっくりとしているらしいがたまにこうして顔を見に来て相談に乗ってくれる。
「先日この爺めにも曾孫が産まれましてのう。孫も可愛いですが曾孫というのはさらにかわいいものですよ」
「ほう…それはめでたい。…お前も歳をとったな」
「貴方様のお父上の頃からお仕えしておりますのでの」
「そうだな。…お前は西方の動きをどう思う」
「…あちらの新しい皇帝は戦がお好きのようですな。故に、無闇に近隣の国々を攻める傾向にありますが、さすがに我らと戦を起こすのはとどまっている様子ですなぁ…何か引き金でもあればすぐにでも戦は起こりますでしょうが」
「そうか…」
スメリカと戦になれば戦火は帝都まで及ぶかもしれない。もし万が一、ここに敵が攻め入ればエディや子供たちも殺されてしまう。
何より民への犠牲が大きすぎる。
戦は避けなければ。
「…全く…疲れるな」
「顔色が優れませんな。…お疲れの体を放っておくと良くないですぞ。若いからこそゆっくり休むことは大事です」
「お前が言うと説得力があるな。…少し休む、お前にもルカを見てもらいたい」
「是非」と頷く爺を連れてエディがいるであろう部屋へと向かう。
今ならルカもいるだろう。
「エディ、いいか?」
「はい。…ベルナール様、お久しぶりです」
「お久しぶりですエディ様。…この爺、ルカ皇子とお目にかかりたいと思いまして」
いいですかな?とエディに勧められた椅子に腰掛けるベルナール。
妊娠中にベルナールとエディは会ったきりなので久しぶりというのも当然か。
眠っているルカを抱いて嬉しそうに笑うベルナールを見てこちらも笑いを漏らす。
デニスも数回しか会っていないのにも関わらずこの爺に懐いている。
この空間は平和だ。
この時間が永遠に続けばどれほど良いか、そう思いながら最愛の人、エディを見ていた。
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