運命とは強く儚くて

文字の大きさ
上 下
134 / 154
Ⅲ -2

1

しおりを挟む



「…ここの警備が薄いな…人を増やせ。厨房に新顔をあまり入れないようにするのと、各場に探りを入れて怪しいものは徹底的に調べろ」

最近の使用人の配置、1ヶ月後に開催を控えているデニスとルカの承認の儀が行われる。
貴族や各国の大使等も訪れる為、油断できない。

元奴隷のエディやデニス、その子供のルカを亡き者にしたいと思う不届き者はこの国にも、他国にもいるだろう。
失うわけにはいかない。


同時に西方での不穏な空気も気になる。
相手も大国、過去には戦いお互い大きな犠牲を出した。戦は避けたい。
関係を緩やかにする為にも招くべきだろう。


「生まれたばかりの赤ん坊というのは初めて見たが…あんなにも毎日成長するものなのか」

「そうですとも。目を離せばあっという間に大きくなってしまいますからな」

マイペースに語る老人はベルナールという。先代、自分の父の友であり忠臣だった者だ。
今では隠居として田舎でゆっくりとしているらしいがたまにこうして顔を見に来て相談に乗ってくれる。

「先日この爺めにも曾孫が産まれましてのう。孫も可愛いですが曾孫というのはさらにかわいいものですよ」

「ほう…それはめでたい。…お前も歳をとったな」

「貴方様のお父上の頃からお仕えしておりますのでの」

「そうだな。…お前は西方の動きをどう思う」

「…あちらの新しい皇帝は戦がお好きのようですな。故に、無闇に近隣の国々を攻める傾向にありますが、さすがに我らと戦を起こすのはとどまっている様子ですなぁ…何か引き金でもあればすぐにでも戦は起こりますでしょうが」

「そうか…」

スメリカと戦になれば戦火は帝都まで及ぶかもしれない。もし万が一、ここに敵が攻め入ればエディや子供たちも殺されてしまう。

何より民への犠牲が大きすぎる。
戦は避けなければ。


「…全く…疲れるな」

「顔色が優れませんな。…お疲れの体を放っておくと良くないですぞ。若いからこそゆっくり休むことは大事です」

「お前が言うと説得力があるな。…少し休む、お前にもルカを見てもらいたい」

「是非」と頷く爺を連れてエディがいるであろう部屋へと向かう。
今ならルカもいるだろう。


「エディ、いいか?」

「はい。…ベルナール様、お久しぶりです」

「お久しぶりですエディ様。…この爺、ルカ皇子とお目にかかりたいと思いまして」

いいですかな?とエディに勧められた椅子に腰掛けるベルナール。
妊娠中にベルナールとエディは会ったきりなので久しぶりというのも当然か。

眠っているルカを抱いて嬉しそうに笑うベルナールを見てこちらも笑いを漏らす。
デニスも数回しか会っていないのにも関わらずこの爺に懐いている。

この空間は平和だ。
この時間が永遠に続けばどれほど良いか、そう思いながら最愛の人、エディを見ていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

処理中です...