運命とは強く儚くて

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Ⅲ- 1

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数日後、ヒースを謁見の為に帝都へ招いた。

皇帝との謁見の前にお茶に招こうと、移動で軽食しか食べて居ないと聞いていたのでお菓子も用意したが気に入ってくれるだろうか。

「エディ様、ヒースを連れて参りました」

「どうぞ、変に気を張らなくてもいいからね」

テオが緊張した面持ちのヒースを連れてきてくれる。確か12歳だったか、歳にしては背が高くてしっかりしている。
口が悪いと聞いていたが1歩近づくと、サッと膝を着いて頭を下げてきた。

「ヒースと申します、皇妃様」

「頭下げないで、座っていいよ。…ほら、好きな物を好きなだけ食べて」

顔を上げさせテーブルに座らせるとテーブルの上の様々なお菓子やフルーツに目を輝かせた。

「い、いただきます」

「どうぞ。…僕も元は奴隷の身分だから、そんなに気を使わないで」

「ありがとうございます。…あの…デ、デニス様が皇子とは知らなくて」

デニス様、と言いにくそうなヒースに思わず笑ってしまう。

「いいんだよ。皇子になっちゃうとみんなよそよそしくなるでしょ、そうやって接してくれる人がいると嬉しいから前と同じように接してあげてほしいな」

「…でも…はい。」

ラマールのことを聞いたり故郷のことを話していると徐々に気を抜いてくれたようで、お菓子を頬張る姿はなんだか年相応で可愛らしい。
寄宿学校の話をすると少し興味を持ってくれたようだ。

「…僕は君を推薦することにしたんだけど。もちろん、衣食住は保証するし勉強もさせてあげるけど、名目上は僕の配下になってしまうし、将来は僕の元やテオの元で働いてもらうかもしれない。」

「それでも大丈夫?」と尋ねると真っ直ぐこちらをみて「はい。…エディ様に忠誠を誓います」と答えてくれた。





その後、お腹いっぱいになったであろうヒースを皇帝の元に送り出した。
書斎で1体1となかなか緊張しそうな様子だったが大丈夫だろうか。

ルカの授乳タイムでその場を離れたが大丈夫だろうか。

一度に飲む量も回数も増えてきたルカだが、その分おしめを濡らして泣いたり、なかなか寝なかったりするらしい。
乳母や侍女には苦労をかける。

時間や体調に余裕がある時は自分もあやしたり傍にいたりするのだがその1部の時間でも大変は大変だ。

それでも徐々に活発に動くようになるのを見ていると可愛く思える。



「おかあさま、ルカいる?」

「いるよ。…手洗った?」

「うん」

おいで、と手招きすると周りをキョロキョロしたり腕の中でモゾモゾするルカをデニスが覗き込む。

「ルカー、おにいさまだよ」

かわいいね、と笑うデニスもかわいい。ぷくぷく頬っぺがふたつも…。

「ヒースがきたってほんと?」

「ほんとう。さっきまで話してたんだよ」

どうして?と首を傾げるとデニスが「ヒースちょっとだけこわい」と呟く。

「そうなの?…デニスはヒースのこと嫌い?」

「…ちょっとやさしいときある…からわかんない」

「そっか」

膝の上に頭をこてん、と乗せたデニスの頭を撫でているとどうやら寝てしまったらしい。
ついでにルカもすやすや寝始めてしまった。



2人とも寝顔がかわいい…けど足も痺れてきたし腰も痛い…。

結局、起こす訳にも行かず1時間後に様子を見に来たテオに助けられた。
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