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Ⅲ- 1
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しおりを挟むルカが生まれてから2週間が経った。
産んで1週間はもう体が痛くてかなわなかったけれど、今ではゆっくりではあるものの短い距離を散歩できるようになった。
皇帝は最近、新しい帝都立の寄宿学校を作る準備で忙しそうだ。
建物は森と山に面している、古い建物を改修したらしい。
宮廷の窓からも見えるので、ここから賑やかな子供たちの声が聞こえると思うと楽しみだ。
「エディ様、お茶をどうぞ」
「ありがとう」
庭園の東屋で休憩しているとテオがお茶をいれて差し出してくれた。
侍医が勧めてくれたお茶で体がよく温まる。
テオにラマールのことを聞いているととある少年の話が気になる。
「…その子はテオの所で指導を受けたいんだよね」
「そのようです。…自分で言うのもなんですが、ヒースと俺とジュダは戦い方が似ているんです。…だから実践も兼ねて指導するとなると…」
「なるほどね。…早く寄宿学校が出来ればヒースも呼べるけど…。」
テオが気にかけるほどの子だ、伸ばせる才能は伸ばしたい。
何とかここに呼んであげれる方法は無いのだろうか。
少し考えているとふと、以前、后になる際に勉強したことを思い出す。
「…皇族推薦って…あるよね」
「はい…確か」
「僕、その権限あるよね」
「はい」
通称、皇族推薦は、皇帝あるいはその家族が推薦した者に何らかの称号を与えたり、帝都に呼んで直属の配下に置かれたりというものだ。
自分がヒースを呼んで、名目上は配下として精鋭隊の訓練やテオの指導を受けれるようにできないだろうか。
「テオは僕に使えてくれているけど、精鋭隊を支える重要な人だよ。将来はヒースにもその役割を担ってもらいたい」
「どうかな」と尋ねてみるとテオが嬉しそうに頷き頭を下げる。
「ありがとうございます」
「ううん、僕のためでもあるから。…でもまずは皇帝にも相談するよ」
「…ということなんです」
夜、寝室で皇帝に頼んでみる。
「なるほどな。…別に構わないが、謁見の際は俺も1体1で対面しても良いだろうか」
「もちろんです。…でも怖がらせたらいけませんよ」
「大丈夫だ。…お前の配下につくのだからしっかり見極めたい」
「少し口が悪いようですけど、僕はきっと気に入ります」
「そうか」
なら俺も気に入るな、と笑った皇帝の口元にキスをして「ありがとうございます」ともう一度お礼を言った。
ルカの夜泣きは忙しい皇帝の眠りを妨げない為か、自分の為か乳母や侍女が別室で対応してくれている。
デニスの時は大変だったからなぁ、なんて。姉さんと義兄さんと代わる代わる、外に出てデニスをあやしたっけ。
そんなことも懐かしいが、いまはそのおかげで彼とこうしてゆっくり寝られる。
すぐに寝息をたてはじめた彼の頬を撫で自分も目を閉じた。
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