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テオとカレル
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しおりを挟む1週間ぶりのジュダ。
駆け寄ってきたジュダを抱きしめ、黒髪に顔を埋める。
「元気だった?」
「うん…!…たくさんたんれん、した」
前よりも表情が豊かになっただろうか、口の回りもよくなっている気がする。
もう少し2人で話したいが今はヒースと鍛錬に行かなくては。
ジュダから体を離し、頭をわしゃわしゃと撫でる。
「また夜話そう」
「うん」
名残惜しそうに指導をしていた青年の元へ戻っていくジュダを見送り、兄さんの傍にいるヒースへと視線を移す。
「…さて、よろしくヒース。俺はテオだよ」
「…ふん…どーも」
こちらを疑わしそうに見ている。
なるほど、初対面の人を見たジュダと同じ様子だ。…まあ、ジュダはこんなに喋らないが。
気にせず「得意なことは?」と尋ねると少し考えた後に「…わかんねぇ。いろいろある」と返ってくる。
こちらのことを観察しているのだろうか。
「まずは一戦、俺と勝負してみる?」
「ッは、いいぜ」
「ハンデは何がいい?…左手しか使わないとか?」
「舐めんな。どんだけ強ぇか知んねぇけど」
その眼、良い。闘志が漲っていて、猟犬のような表情。
先程の鍛錬もそうだが、この子は良い戦い方をするだろう。
「いい心意気だね。じゃ、どっからでもかかっておいで」
兄さんがヒラヒラと手を振り、屋敷へと戻っていったのを見ると手を広げ丸腰を示すと、ピリリとした空気が流れる。
全く、12歳のもつ闘志じゃない。
途端に仕掛けてきたヒースの攻撃を躱し、突き出された拳を受けながら実力に感嘆する。
まだ直すところはあるが十分なほど才能のある子だ。
「逃げんなよ?!」「うぜェ!」とだんだんと怒号が出てきた。
彼の良いところでもある気の強さと勢いだがこれは少し、舐められたものだ。
木のナイフを振りかざしたヒースの手首を動かぬよう固定するとそのまま押さえ込み、ヒース自身の手で彼の首筋にナイフを添えた。
「終了。…次、反省会。座れ」
思わずここにいて鍛錬に明け暮れていた時の口調になってしまう。だがそれくらいがこの子には丁度良いのかもしれない。
渋々ではあるが向かいに腰を下ろしたヒースを見て話を続ける。
「まずは初手、勢いが良いのはいい事だけど、あれじゃ避けられた時によろけて背中を取られる。…次、一つ一つの技がとにかく雑だ。あとは感覚だけで生きるなよ、感覚と理性を上手く使え。視野を広げろ」
「あとは場数だな」と付け足すとヒースの態度が変化していることに気がつく。
少ししおらしくなっただろうか。
その後も鍛錬を続けたが、吸収も早い子で見た事を上手く実践できる子だ。
ジュダの良きお手本、いや、ライバルになって欲しい。
「…君も孤児だったの?」
「あぁ…ジュダ…あいつも、孤児だと思ってた」
「孤児だったけど、俺が引き取ったんだ。…けどジュダはずっと1人だったから人付き合いが苦手でね…ここではどんな感じだった?」
山下りをする為に、そんなことを話しながら山を登る。
鍛錬をしていくにつれ、ヒースの態度が柔軟になってきたのが少し嬉しい。
「…あいつ…他の奴らと混ざりたての時はなんつーか、無表情で機械人形みてぇだった。…けど5歳にしちゃなかなかやると思ってるけどよ…ムカつく」
「ムカつく?」
「勝っても負けても、なんも言わねぇ、悔しそうにも嬉しそうにもしねぇ。…それがムカつく」
「あれでも表情増えた方なんだけどなぁ」
おかしいな、とため息を着くとヒースが小声で「マジか」と呟いていた。
なんやかんや気にかけてくれていたんだろうか。
「…テオ…さん、はここ出身なのか?」
「そうだよ。領主の弟だからね」
「マジかよ!…今はどこに住んでんの?」
「帝都」
「すっげぇ…用心棒とか?」
「今は少し違う仕事だけど…精鋭隊だったよ」
昔の話だけどね、と笑うとヒースがぽかんとした表情でこちらを見てくる。
「すっげえ!!精鋭隊って…!」
年相応のキラキラした目が眩しい。
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