運命とは強く儚くて

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テオとカレル

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「さっき言った12の子はヒースと言ってね、ジュダと同じで貧民街出身の子でね…ジュダと違って他の子らと集団生活をしていたみたいだからなんやかんや面倒見はいいんだ」

「良ければ鍛錬してやってくれないかい?」とテオに尋ねると快く承諾してくれた。

「最近満足に動けてないし、それ終わったら山登ろうかなぁ…さすがに12の山はきついだろうけどやりたいな」

少年のように楽しそうに立ち上がり、伸びをするテオ。
宮廷にいる時とは違う表情だ。もっと高頻度で帰ってこられたらいいのに、なんて考えてしまう。




「あの子だ」

いくつかある鍛錬場の中で、少し小さい屋外の鍛錬場へテオを連れていく。
枠で囲われた中には障害物があって、そこで目まぐるしく動く小さなふたつの影。


「遅せぇよ!ほらほら!」

「ンなもんじゃ弱ぇって」

監督の青年と共に見ているとヒースの煽り声が聞こえてくる。
ヒースはジュダと同じ貧民街出身だが、他の子らと生活していて何やかんや面倒見は良いのだが、1度スイッチが入るとこうなる。好戦的な性格だ。

ジュダも避ける動作が多いが身軽さを活かして障害物の隙間から攻撃をしているが何せ体格差や力の差があってなかなか攻撃が強く入らない。

数分、2人の攻防戦を見ているとヒースの持っていた木でできたナイフがジュダの首筋に当てられる。

「俺の54勝だな、おチビ」

「ッ…」

2人とも息が上がっているが、ジュダは少し悔しそうだ。
前は負けても表情を変えなかったのに、いい兆しだと思う。

枠から出てきたヒースがこちらを見ると、テオを見て「…誰だ?」と眉を顰める。

「…ははうえ…!」

後から出てきたジュダがテオに駆け寄り、テオもジュダを腕の中に引き入れた。
「あいつの母さん?…孤児じゃねぇのか」と独り言を呟くヒースを話しかける。

「…ジュダと戦うのはどうかい」

「全然、あいつは弱いけど…他のやつよりは強ぇし、やってやんないこともねぇかな」

「そうか、これからもよろしく頼むよ。けど、今度はかすり傷をつけられるような凡ミスは無くすように」

ジュダとテオを心做しか少し羨ましそうに見るヒース。

「ヒース、今日はあの人…テオというんだけれど、テオと一緒に鍛錬してもらうよ」

「えぇー…強ぇの?あの人」

「それは自分で確かめなさい」

ぽん、とヒースの頭を撫でてひとしきり話したであろうジュダを引き取り、ヒースをテオに託す。

…さて、どうなる事やらと杖を着きながらアネストは楽しそうに微笑んだ。

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