123 / 154
Ⅱ- 10
2
しおりを挟む「…お前はどんな名前がいい」
「僕ですか?…」
「ああ、お腹を痛めてこの子を産んでくれたのはお前だからな。…お前に名前を贈ってやって欲しい」
「わかりました」
そう言って考え始めたエディから我が子を抱かせてもらう。
柔らかくて温かい。…なんて愛しい存在なのだろう。
勿論、デニスも愛しい我が子だ。だが生まれたばかりの赤子とはこれほどまでに庇護欲をわきたてられる存在だったとは。
エディ譲りの赤褐色の髪にそっと頬擦りする。まだ毛量は少ないがきっと彼に似た子になる。まあ、顔は俺似だが。
エディとデニスは赤褐色の柔らかい毛に澄んだ翠の瞳だ。
2人が並んでいるとそれはそれは可愛らしい。
目鼻立ちのはっきりとしたものは分からないが、愛しい我が子であることに変わりは無い。
「ルカ…」
ぼそ、とエディがつぶやく。
「ルカ、か。良い名ではないか」
「あ、いえ…思いついたまま口にしてしまいました。…昔、姉がよく話していた物語にいた天使の名前なんです」
ふふ、と思い出し笑いか、幸せそうな笑みを浮かべるエディ。
思わず彼の頭を撫でる。
「いいではないか。俺は気に入ったぞ」
「本当ですか。…ではルカにしましょう、僕たちの天使…ルカです」
「ルカ・レジアニ…我が国の第二王子だな。」
エディにルカをもう一度返し、デニスのことを話していると侍女が授乳について話にやってくる。
今日までは専属の乳母に授乳を頼んでいたが、せっかくエディが起きたので試してみるかとの話だった。
「確かに胸は張ってるんですけど…本当に出るのでしょうか」
そんなことをしていると、やはりお腹が空くのかルカがエディの腕の中で元気に泣き出した。
「出ても出なくても、試してみるだけならよいだろう」
「そうですね。お腹も空いてるみたいだし」
エディが服をはだけさせ、胸当てを取るとふっくらと膨らんだ胸が顕になる。
女人には及ばないが、ふっくらとして、くわえやすいようにか先端がつんとしている。
…こんなことを言っていいのかは分からないが…自分も吸いたい。
侍女に教えてもらいながらルカの小さな口元に胸をあてがうエディ。
少し苦戦しつつもやつとのことで咥えてくれたらしい。
「飲んでます…!すごい…」
飲んでる時は静かだね、と聖母のような彼の姿を崇めているとすぐにルカが口を離してしまう。
心配そうな顔をするエディに侍女が付け足した。
「乳母様の元でもこんなご様子でした。恐らく食が細いのでしょう、ご心配なさらずとも何度かに分けて授乳をして頂ければ問題は御座いませんよ」
「そっか…。できるだけ自分で育てたくて…もし良かったらご飯の時は連れてきてくれると嬉しいな」
「もちろん、こ自分の御母上に育ててもらった方が良いです。その時はお連れ致しますね」
「ありがとう」
教えてもらいながらゲップをさせると、すぐに寝てしまった。
彼も疲れただろうからルカを引き取ってもらい、エディを寝かせる。
「…お腹すきました」
「もう数日もすれば普通の食事を取れるだろう。それまでに食べたいものを考えて置いてくれ」
「はい。楽しみです」
0
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる