運命とは強く儚くて

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Ⅱ -9

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「っぐ…ッぁ」

ベッドの柱と陛下の腕を握り締め、痛さに悶える。
お産がはじまるより、格段にきつい。

いきんでください!と助産師が叫ぶが上手く力が入らない。
全身の骨を粉々にされて、内蔵をすり潰されているようだ。

周りは騒がしいのに全て膜の外のように聞こえる。気が抜けば意識を手放してしまいそうだ。

それでもお腹からどん、とん、と蹴る感覚と陛下の声と手があるから保っていられる。
自分が諦めてしまえばこの子は死んでしまう。

「ッぅう"…!」

「偉いな…頑張れ、好きなだけ握ればいい」

下を噛まないように噛まされた布も唾液でびしょ濡れだろう。
涙も汗も出てきっとぐしゃぐしゃだろうがそんなことは気にする余裕もない。


「少し押します!耐えてください!」

助産師がそういうと間もなく上から圧をかけられる。

声にならない痛みに息を止めてしまう。

「息は止めないでください!」

「っ…、」

ひゅぅ、と無理矢理息を吸う。
痛くて苦しい。

何度か押され、その度に耐え難い痛みを与えられる。






何度それを繰り返しただろう。
周りが何を言っているかも分からず、意識も何故保てているのか不思議なくらいだったその時、ずるりと何かが出る感覚と共に、遠くから声が聞こえてくる。

産声…?

「エディ、産まれた…!産まれたぞ!元気な男子だ」

皇帝が頬を撫でて労ってくれている。
布に包まれたその子を隣へ連れてきてくれた。まさに産まれたばかりで、一生懸命泣いている。

良かった…。

やりました、と陛下に言おうと思っても上手く口が動かない。
はくはくと唇を震わせていると陛下が「分かっている、お前は良く頑張った。…ありがとう、愛してる」と涙を流していた。


可愛い、とそっと赤ちゃんに触れてみると暖かくて守らなくてはいけないという気持ちになった。

…でも今はとても…眠い。


デニスもお兄ちゃんになったんだ、と思いながら意識を手放した。

















「産ま…れた」

慌ただしく、緊張感のある部屋に産声が響き渡る。
時計に目をやるともう1日以上が経っていた。

厨房なら湯を運ぶ手伝いをしながらエディ様の苦しそうな声を聞くのは辛かった。

出血も酷く、体力も消耗されていたから少し危ないのではとも言われていたが、終わった。
皇帝が涙ぐんで喜んでいる。

その様子を微笑ましく一同が見守り、後処理に追われていると「エディ!大丈夫か?!」と皇帝の声で場が凍る。

「エディ様…!血の気が引いて体温も下がってる、温めて侍医を!」

油断していた。
ここまでの自分の不甲斐なさを悔やむ前に動かなければ。

産まれたお児を受け取り、丁寧に湯で清めて布で包むと助産師の1人に預ける。

直ぐに侍医がもう1人の医師を連れてやってきた。
属国から事前に呼び寄せていた有名な医師だ。まだ広まっていない最先端の技術を持っていると聞いた。

何やら機械を待ってきて指示をしている。


「皇帝陛下、今からエディ様に点滴を行います。まだ事例がいくつもございませんが、行ってもよろしいでしょうか」

「頼む…エディを何としても救ってくれ」

エディ様の肌が青白く冷たい。
みんなで必死に温め、点滴の様子を見守ること数時間、医師がほっとして表情で頷く。

「…これで大丈夫でございます。万が一に備えて、回復するまでは点滴を少しづつ続けさせて頂きます」

「良かった」と傍でエディ様の手を握っていた皇帝がエディ様の手に口付けて涙を零す。

自分もそんな喜びに浸りたいが、まずはカレルに報告にいかなくてはとそっと部屋を出た。

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