運命とは強く儚くて

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Ⅱ -9

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既に夜中を回っただろうか。


「陛下、少しお休みになられては」

「構うな。…俺が寝てどうする」

エディのお産が難航しているのだ。
数分ごとに苦しげに呻き、汗を浮かばせ歯を食いしばる彼をどれほど見ただろう。

「…どれほどかかるのか」

「分かりません。…ですが長くなるかと思いますので、エディ様の衰弱も心配です。」

定期的に水分補給と、少しでも栄養補給をとのことで果汁をストローで飲ませたり、体を冷やさないようにしたりとしていた。

「エディ、しんどいだろう。…頑張れ」

汗を拭きながら手を握り直すとエディが緩く息を吐く。

「今は少し大丈夫…です。…僕が力入れるとお腹の子が苦しいらしいので」

今は痛みが引いているらしい。
今のうちにと果汁を飲んでもらい、次の痛みに備える彼の頭を撫でる。

「風が…強いですね」

「そうだな…雨が降るかもしれん」

ガタガタと揺れる窓に目をやり答える。
今夜は荒れている。

雨も降って来そうな雰囲気だ。
嫌な天気だが、万事上手くいくように願っている。

エディもこの子も無事であって欲しい。















皆が疲労の影を見せる中、一同は朝を迎え、気がつけば昼過ぎになっていた。
エディも少しづつではあるものの、食事も十分には取れず疲れているのが目に見えてわかる。

もうそろそろ次の痛みが来るだろうと彼に話しかけようとすると彼の手にこれまでにないくらい力が入り、爪が立てられる。


「ぁ"ッ、あ"ぃ"…ッ」

慌てて助産師を呼ぶと、ようやく本格的にお産へ入ると言われた。
やっとか、という気持ちとさらにこの苦しそうな状態が続くのかと思うと心配だった。

痛みの感覚が短くなり、痛みが来ると彼が声を上げて痛がる。
目には涙が浮かび、いきまぬように口に押し当てている枕は濡れていた。

自分には腰を摩ったり、手を握ったり、声をかけることしかできない。

窓の外は強い雨が降り風が吹き荒れていた。




「エディ、大丈夫か?」

「っ…ぁ…ぃか…」

夕方に差し掛かった頃、痛みが引いている時に語りかけるもこれの反応が薄くなってきた。
ぐったりしているのがわかる。

「エディ様、次の痛みがきたらいきんでください」

それを見てか、しばらくすると助産師がそう声をかける。
部屋には助産師やら次女が集まっており皆慌ただしく動いていた。

「エディ、しっかりしろ!頑張れ」

ぐったりする彼を起こそうと強めに声をかけると彼の目がこちらを捉える。

「大丈夫…ですよ、あと少し頑張ります」

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