運命とは強く儚くて

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Ⅱ -9

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「痛い…っ、痛い"」

メキメキと骨盤が広がる感覚と内蔵を抉るような、絞られるような痛みにベッドの柱を握り、枕を噛む。

もう窓の外は暗い。
テオが白湯を飲ませてくれたり、痛みの間隔が空いている間は柔らかいパンを食べさせたりしてくれたが、もうそんな余裕はなくなってきた。

これがもっとしんどくなると思うと気が遠くなる。
まだ序の口というのだろうか。

「テオ…時間…始まってどれくらい…?」

「…5時間、6時間は経ちました」

「陛下は…ッ」

「今早馬を走らせていますので、もう時期帰ってこられますよ」

大丈夫、と代わりに手を握って腰を摩ってくれる。
様子見の為に助産師が交代で見ていてくれるがとにかく、子宮口が開くまで辛抱らしい。
なんて聞いてもよく分からないが、この痛みが続くことはよく分かった。

数分ではあるが、痛みが引く時がある。
痛みの余韻に耐えつつ、テオに吸い飲みで水を飲ませて貰いながらお腹を撫でる。

「他に何か欲しいものはありますか?」

「大丈夫…ありがとう」

この子も頑張っている。自分が呼吸をしないとこの子も苦しいはず、自分が頑張らないと。
早く会いたい。







「エディ!」

布団を折りたたんで抱え込むような姿勢になって、痛みの波に耐えていると勢いよくドアが開き、髪を乱した彼が駆け寄ってくる。
ちらりと時計を見るともう夜だった。

「遅くなってすまない、しんどいだろう」

「陛下…ぁ」

ずっと握っていた彼のシャツを手放し、添えられた手に頬擦りする。
少し心がほぐれた。

「傍にいる。俺は代わってやれないが、何でもしてやる」

「手…握ってて…」

痛い、痛い。
差し出された彼の手を握り、落ち着いた彼の声で少しでも気を紛らわせる。

その後もテオに代わって痛いところを摩ってくれたり、水を飲ませてくれた。
皇帝が人の世話をするなんて変な感じ、なんて痛みでぼんやりする頭で思う。





「どれくらいで生まれるのか?」

「もう少し経てばお児が下に押し出されてくると思いますが…。確証はありませんが、エディ様の場合、もう少しお時間がかかるかと」

「そうか…。」

途中の検診中、助産師が眉間に皺を寄せてそう言う。
やはり男の隠者だからなかなか上手くいかないのだろうか。
それでもこの子に異常が無いのならいい。



「エディ、少しでも何か食べれるか?」

「む、無理…です」

今は波は引いていても直ぐにまたやってくる。
内蔵に圧迫感もあって、とてもじゃないが口に入れて咀嚼するということが出来そうにない。

「1口でもか?…ほら、少しだけ」

シャリ、と冷たい果物を小さくして陛下が口に運んでくれる。
冷たい果物が唇に触れると、火照った体に心地よくてそのままつるりと飲み込んだ。

「偉いな、水飲むか?」

頷くと甲斐甲斐しくストローで水を飲ませてくれる。
陛下が自分の食べなかった分を食べるのをぼんやり見て必死に波が過ぎ去るのを待ち、去ってはまた来るのを何度も繰り返す。




いつの間にやら、もう夜中に近づいていた。

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