運命とは強く儚くて

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Ⅱ -7

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「楽しそう…」

「…参加したいか」

「いえ…今はこちらの方が優先ですから。こうして見ているだけで十分」

「そうか」

日が暮れ、王宮の外の広場で行われている本祭。外ではどんな身分の人でも参加出来る。高位の人は王宮の中で行われている方に参加して来てくれないが寛容な人は平民と共に踊ったり歌ったりしている。

屋台はランタンで明るく照らされ、バルコニーからでも賑わいが分かる。

そんな今は、バルコニーに出してもらったテーブルで皇帝はワインを、自分はお茶を飲みながらみんなの様子を見ていた。

本当は自分もお酒を飲みたいけれど今は我慢だ。

「デニスは元気そうでしたか」

「あぁ、謁見として顔を合わせたが…あの子はなかなかの演者だな。…上手くやっていた、祭典も楽しそうだったぞ」

「わそうですか」

楽しんでくれているならいいや、と茶菓子を齧る。

「…懐妊祝いやら、なんやで貢物がたくさん届いている。今検閲をかけているから、それが終わり次第一緒に見に行こうか」

「そんなにたくさんあるんですか?」

「俺が驚いた程だ。…デニスのことを知っている者はデニスの分も贈ってくれた。物珍しいものも多いだろうから喜ぶだろう」

「…早くデニスに会いたいです」

「明日の夜には会えるさ」

抱き寄せて額に口付けてくれる皇帝にキスをお返しする。

「…この子とも、早く会いたいものだ」

「あと数月ですよ」

日に日に胎動も多くなり、お腹も重たくなってくる。
もう少し食べる量を増やすことを侍医に言われたが、なかなか厳しい。
間食にスープを飲むようにしてからは少しずつ改善されてきたとは思う…はずだ。

何より困るのが、腰が痛くなることだ。
書き物などやることは少なからずあるので机に向かうのだが、腰が直ぐに痛くなってしまう。

その度に皇帝にベッドに入れられてしまうのも困りものだ。

仕方なくベッドで書物に目を通したり、テオ頼んでジュダの鍛練着を直している。
沢山動いているのだろう、同じところが擦れ切れそうだったり、大きく穴があいている。
デニスのもう着れない服をあてて直したりしているのだが、水玉模様のようでかわいい。

「新しいものを買おうと思っているのですがジュダがこれがいいと…嫌がるので」

困ってるんです、とテオが苦笑していた。
ジュダも背が伸びているし、丈が足りなくなっても、ギリギリまで着るだろうなぁと思い出す。




「…そろそろ寝るか」

「はい、支度してきますね」

「体は辛くないのか」

「少しくらい動いた方がいいんですよ」

毎晩、ベッドで陛下の髪を梳かすのが最近のルーティーンだ。
陛下の綺麗な長髪を梳かすのは楽しいし、交合えない分、こうしてコミュニケーションを取れるのは嬉しい。

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