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テオとカレル
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しおりを挟む「ご無沙汰しています」
「カレル君、久しぶりだね。…かしこまらなくてもいいよ、実際、君の方が身分は上だ」
穏やかに笑いながら杖をついて座るよう勧めてくる中年の男性。
微笑んだ目元にうっすら浮かんだ皺や穏やかな口調は柔らかな印象だがその体躯はしっかりとしており、武人という印象を与える。
この男こそ、テオの兄、アネストであり、肩書き上は自分の義兄である。
「いえ、義兄上の上に立つなど私には100年早い。テオにはもう会いましたか」
「いいや、最終日に会えるらしい。…その時に噂のジュダにも会うことになっているよ、楽しみだ」
「そうですか。…はやく会って頂きたいです」
ジュダにとって義兄上は叔父にあたる。
話は聞かせていたが、家族構成に関して疎いジュダはなかなかピンと来ない様子だったが気になってはいるようだった。
「カレル君がそこまで言うなんて、テオに続くやり手なのかな、ジュダは」
「はは。…あながち、間違ってはいません。まさか自分が親になるなんて思ってもいませんでしたから、予想がのことばかりですね」
「そうだろうね。…撲も子供が3人いるけれど、どの子も一人一人違うし、一人一人に驚かされる。…子供とは本当に面白いものだね。…テオは、元気にやってるかい?」
「ほんとうにそうですね。…この上なく元気ですよ、本人に聞いてみては?」
「あの子は僕に弱音は言わない。兄として不甲斐ないが…元々、あの子がああして精鋭隊に入ったのも僕の怪我が原因だ。…それを気にしてテオは言わないんだろう」
困ったような、悲しいような眼差しでいつも引きずっている足を見下ろし摩るアネスト。
テオは精鋭隊に入ったことを少しも後悔はしていないし兄を恨んだことなどないだろう。
むしろ、自分の体質で兄を苦しめたことを悔やんでいるくらいだ。
この兄弟は、自己犠牲が酷い。自分も人のことを言えたことでは無いが、こうも酷くはない。
恐らく2人とも難なく人を殺せるし、必要なら殺す度胸がある。
それなのに優しすぎる。その真逆の感情が反発しあって自己犠牲に陥るのだろう。
「…これは失礼かもしれませんが、私はテオが精鋭隊に入ってくれて感謝しています」
「…」
「テオが精鋭隊にいなければ、私は彼に会うことが出来ませんでしたし、ジュダに会うことも無かったでしょう。…彼も精鋭隊に誇りを持っています、エディ様の近侍も楽しそうにしています」
「そうか…。それな僕も兄として心から嬉しいよ。エディ様に感謝の意をお伝えしておいてくれるかい?」
「もちろんです」
採点の準備は滞りなく進み、明日から3日間は全身分の者が参加出来る、いわゆる本祭が始まる。
また明日から忙しくなる。
部屋に戻ることはあろうが、夜遅くに帰りただ寝て出ていく生活になる。
テオもあまり部屋に戻らないと言っていたし、会うことはないだろう。
……残念だ。
自分は来賓の方への訪問というていでジュダに会いに行くことができる。
もちろん、デニス様の訪問も兼ねて、だが。
2人は本祭に参加する予定らしいし、こっそり様子を見ていようと思った。
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