運命とは強く儚くて

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「来月、大きな祭典がある。…我が帝国屈指の祭典だ、盛大に執り行われるし属国だけでなく他国からも使徒がくる」

「しとってなーに?」

「挨拶に来てくれる人だよ」

エディにぴったりと身を寄せ、質問をするデニス。
少し言葉が難しすぎただろうか。

「そうだ。…そうだな…他の国から大勢の人が来る大きなお祭りがある。…そこで、デニスは皇太子という身分は隠して参加してもらう。…祭りには参加したいだろう?」

「したい!…あのね、おとうさま…ジュダもいい?」

「もちろん。…初めからそうするつもりだ。だがジュダは人の多いところは平気なのか?」

「ジュダがいきたいって」

「そうか、いつもの護衛も付けさせるから無理はしないよう言うんだぞ」

「うん!」

デニスのことは俺、即ち皇帝の近縁の子供として参加してもらう。
まだ正式に皇太子として公表こそしていないからこそ芽を摘みたい輩が大勢いる。
警戒は厳重にするがしても足りないというものだ。

「…僕は陛下のお傍にいれますか?」

「お前はその体だ、無理はさせたくない…大勢の者が王宮に出入りする、何があるか分からない。…来賓の挨拶は祭典の前にあるその時は一緒にいて欲しい、祭典中は式の際だけいてもらおうと思う」

「祭りには参加したいか?」と付け加えるとエディが首を捻る。

「お祭りは好きなんですけど…やはり大勢の人の前に出るのは苦手で…」

「そうか…式典が終われば好きにしても構わない、が必ずテオや護衛と共に行動しろ」

「わかりました」

愛しそうにデニスの頭とお腹を撫でるエディ。
まるで聖母のようだ。

エディの出産に備えて、出産経験のある男性隠者や熟練の助産師を手配した。
身元もしっかりと調べあげ、怪しいところはひとつもないと思う。

来週には数人が王宮内にやってくる。
まだ早いとは思うが、念には念を入れて。途中何があるか分からない。
男性隠者の出産はかなり過酷と聞く。最悪命を落とすことも少なくない。

彼を失うことになるなんて、絶対にしたくない。

「?…来ますか?」

じっと見つめてしまっていたらしい。
デニスを撫でていない方の腕を広げて彼が首を傾げてくる。 
まあ…願ってもない幸福というものか、

「そうだな」

彼の腕に収まるようにベッドへと身を倒し、彼の手のひらの温もりを感じる。

優しく髪から頬を撫でる彼。
デニスはさっそく寝てしまったらしい。

気持ちもわからんでもない、これはあまりの安心感に寝てしまいそうになる。

「これは…寝てしまうそうだ」

「かまいませんよ。…陛下、最近忙しそうですので…たまにはゆっくりお昼寝してほしいです」

「僕もこうしてたいので」も微笑む彼に完璧に魅入ってしまう。
彼はとんでもない男だ。


そう思いながら彼に身を寄せ、もう少し目を瞑ることにした。

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