運命とは強く儚くて

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「おとうさま」

「来たか、部屋では静かにな」

「はぁい」

呼んでいたデニスと合流し手を繋いで、一緒にエディの寝室へと向かう。

エディは診察中らしい。
デニスを呼んだのは収穫祭のことを知らせておくついでだ。
しばらくばたばたしていてデニスとも過ごす時間が少なかったからたまにいいだろう。

手を繋いで足取り軽く、近況報告をしてくれるデニスの話を聞きながら寝室へと到着するとそっとドアを開ける。

「どうぞ?」

侍医と話すエディの邪魔をしないよう端に行こうとするとすかさずテオに椅子を用意される。

…気配を消すのはやめて欲しいものだ。


「では陛下、私はこれで失礼致します」

穏やかに笑いながら侍医が出ていくと、エディの傍らに腰掛ける。

「順調だそうですよ。…最近じゃたくさん動いてて。…デニスも触ってみる?」

「うん!」

ベッドによじ登り、優しくエディの膨らんだお腹に手を添えるデニス。
しばらく手を当てていると感覚があったのだろうか。「うごいた!」と嬉しそうにしていた。

「また大きくなったな…この子もデニスも」

「本当ですね。…お腹が大きいとやっぱり大変です」

「何か不便があれば何でも言えばいい。…手伝いの出産経験のある男の隠者を何人か探して、今身元を確認しているところだ」

「ありがとうございます。…そんなに気を使って貰わなくても」

「だめだ。…お前や、その子を失いたくは無い。この国にとっても、もちろん俺やデニスにとってお前は大切な存在だ」

彼の頬を撫でると「わかりました」と素直に頷いてくれる。
デニスはエディの膝元で甘えるように寝転がっていた。安心するのだろう。

男の隠者にとって、出産は大変と聞く。もちろん、男女問わず大変なこととは思うが、事例も少なく、何より出産に適応していない男の体では最悪命を落とすことも少なくない。

そんなことは絶対に避けなくてはならない。

「…デニス、お祭りの話だ。」

「おまつり?」

気を取り直して、持ってきた資料と共にそう呼びかけるとキラキラとした表情でデニスがパッと起き上がる。

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