100 / 154
テオとカレル
2
しおりを挟むジュダを探しに、デニス様の元を訪れると王族のための授業の最中でジュダはいなかった。
アッシアによると、退屈だろうし自由にさせているらしい。
いつもは一緒に授業を受けているらしいが今日はやることがあるとどこかへ行ったらしい。
さて、どこへ行ったものか。
考えながら外へ出て鍛錬場へと歩いていると何やら気配を感じる。
殺意は無い。
警戒しながら調子を止めずに脚を進めていると、どうやら追ってきているようだ。
足音や物音はほとんどない。成人男性じゃない、女性でもない…となると子供。
…なるほど。
鍛錬場までそのまま足を進めて手前で立ち止まると、振り返って手を広げる。
「そろそろ出ておいで、はやく会いたいよ」
と木の上に声をかけるとするするとジュダが降りてきて飛びついてきた。
しっかりと受け止め、抱き上げて頬擦りする。
「ただいま、また1人にしてごめんよ。…いい子にしてた?」
「ちちうえ…いたから、大丈夫。…してた」
「そっか、えらい。今から明日は一緒にいられるよ、何したい?」
「…けいこ…!」
そう思った。
この年頃の子が親に言うことと思えば遊びたいだの言うと思うが、余程この子は鍛錬が好きらしい。
…自分も昔はそうだったな、なんて思いながらジュダを下ろし、手を取って鍛錬場へと入る。
「じゃあ…特訓の成果を見せてもらおうかな」
「はい…!」
嬉しそうなジュダと軽く走り込みやウォームアップをして、石段へと腰掛け、ジュダの構えからの一連を見守る。
す、と構えた時からの切り替え、基礎動作の突き、蹴り、受け…跳んで蹴り…。
これで4歳か。
磨けば磨くほど光る、ダイヤの原石だ。
自分のように無理はさせたくない、させたくないが伸ばしてやりたい。
この子が望むのなら。
一通り終えて、体制を整えたジュダが息を整えながらこちらをモジモジと見てくる。
「すごいよ、とっても上達してる。…頑張ったんだなぁ」
立ち上がってそばに寄り、わしゃわしゃと頭を撫でてやると嬉しそうに笑った。
可愛いらしい。
「…なおすとこ…教えて」
「そうだな…まずは体幹かな、まだまだ成長途中だから地道にやっていけばいいよ。体作りもやってみようか」
楽しそうに頷いたジュダの頭をもう一度撫で、今度はナイフの動きも見せてもらう。
明日は森に行って、狩の仕方や弓矢も教えたい…足場の悪いところでの戦い方や生き延び方…教えたいことが山ほどある。
まだ幼い、焦らなくても良いのかもしれない。けれどこの子に自分のもつ全てを与えたくて仕方がなくなってしまう。
その後、強請られて新しい技や動きを予定よりいくつも教えることになった。
嫌でも立場上、やらなきゃいけない時がある。
それまでは楽しんでほしい、自分のようにはなって欲しくない。
そう思いながら夢中で動作を繰り返すジュダを見守った。
0
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる