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テオとカレル
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しおりを挟むエディ様の元を出て、途中でこっそりジュダの様子を見てきた。
相変わらず楽しそうにデニス様と遊んでいたのでほっとしつつ、後で脅かそうとそっと身を引いた。
最初に向かったのはカレルの書斎。
まだ帰ってきたことはしらないだろうから
数ヶ月前から度々、精鋭隊の仕事を手伝うようになった。
出歩かなくなったエディ様のご厚意だ。大切な体だ、そばで守っていた方がいいかと思ったが、ありがたく偵察がてら行かせてもらうことにした。
「どうぞ」
書斎をノックすると淡々とした声が返ってくる、仕事中の彼だ。
そっとドアを開けても顔を書物から上げない彼。
忍び足で寄り、その顔を覗き込むと目が合う。
「…驚いた…おかえり」
「ただいま。…変わりない?」
「うん…君こそ、怪我は?してないかい?」
「もちろん、俺を誰だと思ってんの」
顔を上げた彼と軽くキスを交わすと彼に抱きしめられる。
「防具、固くない?脱ごうか」
「いい。…そのままの君がいいよ」
全く。
しばらく抱きしめあって、彼の向かいの椅子に腰を下ろした。
「任務はどうだった?」
「特に大変な任務じゃ無かった、大変なのは教育だよ」
精鋭隊見習いの青年達に課せられた任務に同行し、補助や指導をするのが俺の仕事だ。
正直、精鋭隊としての任務と考えたらかなり楽なものだ。
けれど、訓練は血のにじむほどやろうが人の死を体験していないものが多い。
初めて身近で無惨に血が流れるのを見た青年達には焦りや躊躇が見える。
実戦経験もない彼らに実戦での命のやり取りでしか学べないことも叩き込む。
なかなか大変だ。
特に、俺が精鋭隊を離れていた間に入隊した奴らは俺が隠者ということを知ってどうこう言ってくる。
そんな時は自分の方が実力があるも教えてやれば大人しくなる。
実力主義の奴らが多い分、そこら辺は楽だ。
「ジュダにはもう会ったかい?」
「まだ。さっき見てきただけ、驚かそうと思って」
「きっと喜ぶよ。…慣れたとは言っても、まだ子供たからね。…君がいない間、朝の鍛錬にも1人で行っていたし、自主練もしていたようだ、褒めてあげて」
「もちろん。…明日は1日おやすみわ貰ったから1日一緒にいるつもりだよ」
「…私は明日は仕事だ」
見るからにしょんぼりしてしまっている。
笑いながら彼の頬を撫でて「カレルは、今夜ね」と言ってやる。
「…ふ、楽しみにしてるよ」
「うん」
楽しそうに笑ってペンを手に取った彼ともう一度キスをして書斎を後にジュダの所へと向かった
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